🏹17〕─1─1250年代後期にインドネシアで巨大噴火。日本とロンドンで大量の餓死者。~No.50No.51No.52 

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 地球の急激な寒冷化は、巨大火山の大噴火が原因である。
 氷河期・小氷河期は、主に太陽活動の低下である。
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 2018年5月号 Voice「歴史論争  渡辺惣樹
 1257年の日蓮、ロンドンそしてインドネシア
 日蓮安房小湊の出身であるが、伊豆半島を中心とした静岡県東部にも彼に因(ちな)む史跡が多い。日蓮は遅れてやってきた宗教家だったこともあり、既成の宗教批判を布教のテクニックとした。それだけに法難と呼ばれる事件を数多く起こした。1260年夏、日蓮は『立正安国論』を時の最高権力者北条時頼に提出し、『邪教(既成宗教)』信仰の害を説いた。それが幕府重鎮の怒りを買った。大室山(伊豆伊東)から溶け出したマグマが作った荒磯の岩礁(俎{まないた}岩)に置き去りにされたのはそのためだった(1261年、伊藤法難)。いまその地には日蓮宗の古刹蓮着寺が立つ。
 日蓮が説く『害』とは当時頻発していた地震異常気象そして飢饉だった。『天変・地夭(ちよう)・飢饉・疫癘(えきれい)遍(あまね)く天下に満ち・・・牛馬巷(ちまた)に斃(たお)れ、骸骨路(みち)に充(み)てる』(立正安国論)と書き、『邪教』信仰の弊害を訴えた。確かにこの3年前(正嘉元年〈1257〉8月23日夜9時頃)には江ノ島近くを震源地とする大地震マグニチュードは7から7.5の直下型)が鎌倉を破壊し、これ以降、作物の生育も悪く飢饉が襲った(正嘉{しょうか}の飢饉)・
 ロンドンの大量人骨発見 ロンドンの下町はイーストエンドである。いまでは多くの移民が暮らす。その一画のスピッタルフィールズ地区で大量の人骨が発見されたのは1991年のことだった。2007年まで続いた発掘調査でおよそ1万500体が見つかった。未発掘分を含めれば1万8,000体になると推定された。現場は中世ロンドンの東端に位置し、この地以東は畑や荒野であった。夥(おびただ)しい遺体は街のはずれに埋められていた。当時ロンドンの人口はおよそ5万であったからその3分の1が同時期に死んだのである。中世ロンドンでこれだけの死者を出すような戦いはなく、黒死病(1348年)の犠牲者と考えられた。しかし炭素年代測定により、それよりも100年早い1250年代の人骨であることが判明した。
 研究者はこのころイギリスだけでなく大陸各地で飢饉が発生していたことに気付いた。原因は冷夏による凶作であった。記録から1257年から58年にかけて大雨が続き、気温が低下し凶作であったことがわかった。その結果がヨーロッパ各地に発生した飢饉であった。地球規模で急激な気温低下は火山噴火が原因だと考えられた。上空高く吹き上げられたSO?ガスが太陽光を遮ったらしいのである。しかしこのころに大量の餓死者を出すほどの大噴火の記録はどこにもなかった。
 ロンボク島の大噴火
 科学者たちは噴火した火山の特定を始めた。過去の空気成分は南北の極地にある厚い氷の層に閉じ込められている。両極地から採取された氷層の分析で1257年に確かに巨大な火山噴火があったことが確認された。南北両半球からの発見は爆発が赤道に近かったことを示すものだった。科学者は、赤道付近に分布する巨大火山を綿密に調査した。現代の衛星写真は驚くほどの精緻(せいち)な映像を提供する。彼らが目を付けたのは、インドネシア南部ロンボク島にあるリンジャニ山(3,726m)であった。富士山とほぼ同じ高さを持つインドネシア第三の高峰(こうほう)の頂(いただき)に巨大なカルデラ湖(セガラ・アナ湖)がある。
 フランスの火山学者チームは現地に向かい同地の専門家と共同調査を始めた。そこで大規模な火山爆発を示す120フィート(36m)にも及ぶ火山灰の層を発見した。イタリアポンペイ近郊の層の6倍に匹敵する。更に1257年に激しい噴火があったことが現地に残る木簡に記されていた。ただ問題があった。木簡には『サマラス山』が爆発したと書かれていたが、その名の山はどこにもなかった。
 しかし、その後の研究で、それがカルデラ湖の上に聳えていた山だったことがわかった。マグマの噴出でできた地下の空洞にサマラス山が陥没して消えていたのだった。
 現在のリンジャニ山はサマラス山の上部が消えた残滓(ざんし)の外縁だった。カルデラ周囲の傾斜角から計算されるサマラス山の頂は4,200mであった。火山学者は、こうした1991年のロンドンでの大量人骨発見からロンボク島の巨大噴火に辿りついた。
 日蓮が描いた日本の惨禍と、ロンドンの飢饉はサマラス山の爆発が原因だったことに間違いないであろう。世界の動きと日本の事件を関連してみると、しばし思いがけない発見がある。」

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