☷26〕─1─韓国は変化を厭わない先取り精神の勤勉・勤労で世界的なデジタル先進国に成長した。~No.71No.72 

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 惰眠の日本は、デジタル後進国へと衰退、後退した。
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 2023年2月24日 MicrosoftStartニュース ダイヤモンド・オンライン「
 韓国ソウルで感じた日本のデジタル後進国ぶり、入国システム・3Dディスプレイ…
 大谷和利 筆者は先日、所用と観光を兼ねて約4年ぶりに韓国のソウルを訪れた。欧米に拠点のある企業の取材もリモートでの対応が多くなった昨今、今回の渡韓は、新型コロナウィルス禍に見舞われて以降、初めての海外渡航でもあった。サムスン電子LGエレクトロニクスのお膝元でもある韓国は、日本よりも社会のIT化が進んでいることが知られている。数日のソウル滞在の間に見聞きしたデジタル事情と比べると、残念ながら日本はかなり遅れていると言わざるを得ない。(テクノロジーライター 大谷和利)
 Photo by Kazutoshi Otani
 © ダイヤモンド・オンライン
 サムスンは折りたたみスマホマーケティングに注力
 縦開き・横開きの2種類
 韓流の刑事ドラマでは、食事をインスタントラーメンで済ませるような新米刑事まで高価な折りたたみスマートフォンのGalaxy Flipを使っていたりして、あからさまなプロダクトプレイスメント(番組内に製品を登場させる間接広告:以下、PPL)に苦笑することがある。
 実は、韓国のTVドラマは放送法の規定で途中にCMを入れることが禁じられており、制作側の収益面ではPPLの比重が高い。CMが挟まれない分、ストーリーに集中できそうだが、劇中の役には不釣り合いな製品を使用していたり、登場人物が急に化粧品や炊飯器を褒め始めたりするので、思わずツッコミを入れたくなる。
 中には、そういうシーンの小道具にPPLの文字が配されている(たとえば、カフェで座っている3人の客が、それぞれ「P」「P」「L」のレター入りトレーナーを着ているなど)、正直というかある意味開き直った演出を行うドラマまであった。
 そんなPPLで見かけることの多いGalaxy Flipだが、メーカーのサムスン電子は、ロシアのウクライナ侵攻などによる消費の冷え込みの影響で2022年に大幅減産を強いられた結果、シェアを拡大するよりも利益率の高いモデルに注力する方針を進めている。そのため、販売面ではたためないGalaxy Sシリーズに及ばなくても、縦開きのGalaxy Flipと横開きのGalaxy Foldのマーケティングに力を入れていくようだ。ただし、中国のOPPOも、Android製品の中で差別化を図るために自らが先行した縦開きのFlipタイプのスマートフォンに力を入れていくと公言しており、もしも価格競争になると苦しい戦いを強いられる可能性もある。
 さすがはサムスン電子のお膝元で、たまたま地下鉄に乗ったときに、並びの親子連れの女性と向かい側の青年が、ともにGalaxy Flipを使っているような場面にも遭遇した。それでも、ソウルの某有名大学の副学長さんに話を聞くと、「韓国ではもちろんAndroidユーザーが多いが、学生たちの間ではiPhoneが人気」だという。この方自身も、そして同席された中堅の男性の先生もiPhoneユーザーで、Apple Watchの愛用者でもあり、3月から韓国でサービス開始予定のApple Payを使うことを楽しみにしていた。
 シェアよりも利益重視に転ずるサムスン電子の縦開きスマートフォン「Galaxy Flip 4」 Photo:Samsung
 © ダイヤモンド・オンライン
 韓国では、2019年の時点ですでに国民全体の92%にスマートフォンが普及しており(https://www.nia.or.kr/site/nia_kor/ex/bbs/View.do?cbIdx=99870&bcIdx=21930)、60代でも9割近くの普及率(https://www.nia.or.kr/site/nia_kor/ex/bbs/View.do?cbIdx=99870&bcIdx=22082)だった。これに対して、日本は2021年の調査でも88.6%(個人保有全体では74.3%、同じく60代では79.3%)となっている(https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/data/220527_1.pdf)。
 AndroidiPhoneの割合(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000093.000034654.html)では、韓国がほぼ世界平均と同じ70%強:30%割弱で、日本は逆に35%弱:65%強だが、上記のように韓国の若い世代のiPhoneへの関心が高まっているとすると、今後、iPhoneがよりシェアを伸ばしていく可能性もありそうだ(ちなみに、韓流ドラマのPPLではアップル製品もそれなりに目にする)。
 EV化が進む都市部のタクシー、
 ロボタクシーもテスト走行中
 ソウルのタクシーは、一般のタクシーと、無事故歴10年以上のドライバーが乗り、運転や応対が丁寧な黒塗りの模範タクシーに分かれている。初乗り(1.6キロ)料金が2月1日から値上げされ、一般タクシーで約480円、やや高めの模範タクシーは約700円だが、それでも、東京23区内タクシーの初乗り約1キロ470円~500円よりは(距離も考慮すると)安価といえる。
 ソウルでは流しのタクシーも次々にやってくるので困ることはないが、街中で観察していると、特に若い人はカフェなどでお茶している間にアプリで手配し、来たら乗るというようなスタイルが定着しているようだ。特に冬は、そのほうが寒い戸外で待つ必要がなく、支払いも同時に済むので、合理的ということなのだろう。
 その一般タクシーで今回目立ったのが、現代自動車(ヒョンデ)のEV、「IONIQ 5」(アイオニックファイブ※)だった。日本でもインポート・カー・オブ・ザ・イヤーに選ばれ、京都のMKタクシーも計50台の導入が進行中。筆者自身も発表時から注目していた車である。
 EVに新たなデザイン言語と価値観を持ち込み、タクシー車両としても活躍するヒョンデ自動車のIONIQ 5をベースに開発されたロボタクシー Photo:Hyundai Motor Company
 © ダイヤモンド・オンライン
 IONIQ 5のエクステリアは、パラメトリックピクセルと呼ばれるデジタル由来のデザイン要素がLEDヘッドランプ、同リアコンビランプ、アルミホイールに採り入れられている。インテリアのデジタルメーターにも、他には見られないホワイト系のベゼル(筆者は、iPodや白いバリエーションが存在した時代のiPhoneiPadを想起した)を採用するなど、独自のEVイメージを確立しようとする意思に満ちている。
 その意思は、テスラにもないヘッドアップディスプレイ(スピードやナビ、死角エリアの車両センサー情報などをフロントウィンドウにAR投影する)や、クラス最長の3メートルのホイールベースと切り詰めた前後のオーバーハングがもたらす全体のプロポーション(そのためにコンパクトに見えるが、実際のサイズはトヨタRAV4よりも大きい)、全席に位置や背もたれ角度のメモリー機能が付き、センターコンソールを含めて大きく前後に移動できる電動シートアレンジ、停車中にフロントシートを座面ごと傾けて休めるリラックスポジションなど、インテリアの随所にも散りばめられている。
 ※2022年6月に、韓国でIONIQ 5が高速道路上の構造物に突っ込む単独事故により、衝突後3秒でリチウムイオンバッテリーが発火し、ドライバーと同乗者が死亡という痛ましい報道があったが、これは時速100キロでノーブレーキの衝突、かつシートベルト未装着で死因は衝撃によるものだったことが明らかとなっている。車両自体はヨーロッパの厳しいNCAPの衝突安全テストにおいて最高評価の5つ星を獲得しており、それでも構造物がリチウムイオンバッテリーを突き抜けたことが発火の原因だった。スマートフォンも同様だが、リチウムイオンバッテリーはそのような危険を内包しており、この点は、全個体電池などが実用化されない限り、避けきれない問題といえる。
 ソウルでテスト中のロボタクシーは
 早期にレベル4の自動運転を実用化を目指す
 さらにIONIQ 5は、ヒョンデとアプティブ(アイルランドに本社のある自動車テクノロジー企業)との合弁企業のモーショナルが開発している、自動運転レベル4(決まった走行ルートなどの特定条件下で可能な、人ではなくシステム主体で車を走らせる自動運転)を実現するロボタクシーのベース車両ともなっている。今回の訪韓中には見かけなかったが、このロボタクシーもソウル市内でテスト走行中だ。
 折りしも「人工知能(AI)産業の育成と信頼確保に関する法案」が、韓国国会科学技術情報放送通信委員会の情報通信放送法案審査小委員会を通過したとの報道があったが、そこにうたわれていたのは「まず認可・後に規制」という事後規制の原則だ。もちろん、実際の議会での可決までには踏むべき段階が残っているものの、おそらくほぼそのまま成立し、ロボタクシーもこのような原則の下での早期の実用化を目指すものと思われる。
 ちなみにヒョンデは、EVではないものの、ビジネス用のリムジンから大型タクシー、幼稚園などの送迎用まで幅広い用途に対応する新世代の世界戦略ワンボックスカー「STARIA」も擁している。予約開始の初日だけで1万台のオーダーを受けたという人気車種だけに、こちらも市内のあちこちで見かけた。IONIQ 5もそうだが、周囲を威嚇するようなフロントマスクを持つ日本のワンボックスとは一線を画すSTARIAの佇まいを見ていると、K-POPや韓国ドラマのように、韓国車が価格ではなくコンセプトや質の面で世界に受け入れられる日が近いことを予感した。
 ヒョンデ自動車の世界戦略ワンボックスカー「STARIA」。周囲を威嚇するようなフロントグリルもなく、クリーンでスムーズなデザインと、ルーミーで多様な使用目的をカバーするバリエーションを持つ Photo:Hyundai Motor Company
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 新しいデジタルサイネージへの
 積極的な取り組み
 2021年の暮れに新宿駅東口近くに設置されて話題を呼んだ、特定の角度から見ると猫やルンバが飛び出して見える3D街頭ビジョンも、韓国ではそれ以前から導入されていた。実際に機材の開発・製造を行っているのは中国企業だが、本国以外で設置した国は、韓国が最初だったようだ。
 というのも、韓国は新しい技術や製品に対する抵抗感が少なく、スマートフォン普及率の例からも分かるように、全年齢層がアーリーアダプター的な消費動向を持っているためだ。それゆえ韓国市場は、国外企業からも新たな技術や製品を試験的に投入して反応を確かめる場として捉えられているところがある。
 アパレルやアクセサリー系の問屋やテナントがひしめき合う東大門(トンデモン)のファッションビルの1つにも、新型コロナウィルス禍以前にはなかった新型の街頭ビジョンが設置されていたのだが、それはある意味で擬似的な3D街頭ビジョンを超える、リアルな3Dビジョンといえた。なぜなら、細かくブロック分けされたLEDパネルが、個々に物理的に前後しながら画像を表示する、本物の立体(構造)ディスプレイだったからだ。
 「ウェーブスクリーン」と呼ばれるそれがウネウネと動いている様子は、少し離れた位置からはプロジェクションマッピング的な目の錯覚かとも思えた。だが、近づいてみると、実際にパネルが動いていることに驚かされた。これも作っているのは中国企業だが、韓国での反応を見たうえで、他国にも売り込んでいくのだろう。
 中国メーカーの製品だが、いち早く韓国のファッションビルmaxtyleに設置された、物理的な立体感が特徴のウェーブスクリーン Photo by K.O.
中国メーカーの製品だが、いち早く韓国のファッションビルmaxtyleに設置された、物理的な立体感が特徴のウェーブスクリーン Photo by K.O.
 © ダイヤモンド・オンライン
 ただし、正直なところインパクトの点では、擬似的とはいえ立体感に勝り、表示するイメージのバリエーションも豊富な3D街頭ビジョンのほうに軍配が上がるといわざるを得ない。また、可動部が多いのでメンテナンスも大変そうだ。しかし見る側の角度依存が少ないことや、既存のコンテンツもそのまま表示でき、専用コンテンツの制作も3D街頭ビジョンより簡単に行えそうな点ではメリットもある。設置場所の自由度も高く、特に近距離から見たときに迫力を感じるので、それぞれの特徴を生かして使い分けられていきそうだ。
 空港システムの進化に見る
 日韓の違い
 最後に、韓国入出国と帰国時に感じた日韓の違いを書いておきたい。
 現在、渡韓時にはK-ETA電子渡航認証システム)とQ-CODE(検疫情報事前入力システム)の事前登録が求められる。前者は、ビザが免除されている国籍の渡航者に対して義務化されており、後者は任意だが、7日間の隔離を免除されるワクチン接種歴の確認を渡航前に済ませられるので、入国審査がスムーズになる。
 K-ETAは英語のみ、Q-CODEは韓国語と英語のみの対応だが、旅行社などが公開している日本語の解説サイトがあるので、それらを参照すれば、さほど支障なく登録できるはずだ。
 問題は、Q-CODE申請は無料だが、K-ETAは約1000円の申請料がかかり、クレジットカードのみでの支払いとなるため、そこを狙った偽サイトも少なからず存在するという点である。被害に遭わないためには、大使館や航空会社、大手旅行社の公式ページからのリンクを使って正しいサイトにアクセスするのが良いだろう。
 日本出発時の空港は、平日にもかかわらず訪日外国人で大混雑しており、まだ制限されている中国からの団体客を除けば、ほぼ客足が戻ったかのような印象だった。そのため、ソウルの仁川空港でも入国審査で時間が取られることを覚悟していたのだが、幸いなことに窓口に並ぶ人数も少なく、また、パスポート照合によるK-ETAの確認と、Q-CODEの二次元バーコードの読み取りによって、拍子抜けするほど簡単に、短時間で通ることができた。
 仁川空港では2014年から
 セルフバッグドロップシステムの導入が進む
 また、航空便のオンラインチェックインはほぼ常識化しているが、機内持ち込みできないスーツケースなどのバッグドロップ(手荷物預け入れ)は、航空会社のカウンターで物理的に行う必要がある。しかし、仁川空港では、大韓航空などを皮切りにセルフバッグドロップシステムの導入が進んでおり、搭乗券とパスポートをスキャンして、荷物を乗せたコンベア台のカバーが閉まるとX線検査がその場で行われ、問題なければカバーが開き、プリントされたタグを自分で荷物に取り付けることで処理が完了する。
 アジア圏では、いち早く2014年から韓国の仁川空港への導入が始まっていたセルフバッグドロップシステム Photo:KOREAN AIR
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 同種の機材は、日本でもANAが2015年に羽田空港の国内線カウンターに導入し、2017年に成田空港の国際線での実証実験を行って以来、普及が進んでいる。仁川空港では、オランダのスキポール空港、イギリスのヒースロー空港、オーストラリアのシドニー空港などに続いて、2014年から導入開始していたので、やはり、先に触れた先取精神が発揮されたようだ。
 デジタル庁推進
 「Visit Japan Web」の使い勝手は……
 実は、今回の旅で最も不可解だったのは、関西国際空港帰国時のVisit Japan Web(デジタル庁が推進する入国手続オンラインサービス)の対応だった。事前登録した画面またはプリントアウトを見せることで検疫を通過できるとの触れ込みで、実際にもその通りだったのだが、ターミナル間の移動用シャトルは利用できずに通路を延々と歩く必要があり、要所ごとにやたらと多くの係員が配置されている。
 訪日外国人が最初に体験する「おもてなし」としては残念な、Visit Japan Webのスマートフォンアプリ Fig by K.O.
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 しかも、Webの説明では(ネット接続ができない場合に備えて)「縦に長いページの3つの要素を確実にスクリーンショットで保存するか、プリントアウトして見せること」となっていたものの、実際には、数をこなすためか移動途中で最初の画面をチラッと見る程度で、何の証明にもならず、最悪の場合、偽造も簡単に行える(適当なスクリーンショットを入手するだけ)と思われた。
 さらに、帰国後に改めて登録ページを確認すると、先の縦長ページを一度にダウンロードできる機能が追加されていたのだが、リンク先に飛ぶと、スマートフォンのスクリーンに収まらないサイズの画像が縮小もスクロールもできない状態で表示され、ダウンロードボタンも表示されない状態だった。動作検証の有無や、その程度の改修にいくら税金が使われたのか、大いに気になる。
 NIA(韓国知能情報社会振興院)の資料によれば、国連やOECDなどの国際機関によるDX、IT関連のランキングで、韓国はICTの国際競争力、ICTインフラ整備、電子的な社会参加、オープンデータ利用、AIの民主的利用の項目で1位を獲得している。もちろん、同時にさまざまな社会問題も抱えているものの、ことデジタル技術の推進やDXに関しては、政府が音頭を取るだけでなく、具体的に利用しやすい形で社会実装が進められなければ意味がないことが、きちんと理解されていると感じられた。
 世界規模のDX、IT関連ランキングで1位の獲得が目立つ韓国 出典:NIA(韓国知能情報社会振興院)
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