🗾6〕─3─DNA解析から縄文人度の高い地域を探れば、肥満や喘息になりやすい県民も分かる?~No.21No.22 

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 科学的DNA解析から、日本民族は漢族中国人と朝鮮半島人とは別種のアジア人である。
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 2023年2月28日 YAHOO!JAPANニュース ニューズウィーク日本版「DNA解析から縄文人度の高い地域を探れば、肥満や喘息になりやすい県民も分かる?
 <東京大学大学院理学系研究科の渡部裕介特任助教と大橋順教授の研究により、縄文人と渡来人の混血度合いには地域差があることが分かった。最も縄文人由来のゲノム成分の比率が高かった地域は? 渡来人と比べてどんな特徴がある?>
 渡来人由来のゲノム成分の比率が最も高かったのは、最初に上陸したと考えられる九州北部ではなく……(写真はイメージです) FrankRamspott-iStock
 「自分はどこから来たのか」について、興味を持つ人は少なくないでしょう。最近の一般向け遺伝子検査では、疾病リスクや体質だけでなく、祖先の特徴や民族学的なルーツを知ることができると謳っているものもあります。【茜 灯里(作家・科学ジャーナリスト)】
 【動画】2100年に人間の姿はこうなる
 2022年ノーベル生理学・医学賞は、約4万年前に絶滅したネアンデルタール人の骨片のDNAを解析して現生人類の起源に迫った、独マックスプランク進化人類学研究所のスバンテ・ペーボ教授が受賞しました。古人類学にDNA解析を用いる手法は、近年は日本人の成り立ちの解明にも用いられています。
 現代の日本人は、主に縄文人弥生時代の渡来人(弥生人)をルーツにしています。みなさんも「縄文人は彫りが深く、渡来人は平坦な顔立ちだった」などの特徴を耳にしたことがあるかもしれません。では、縄文人と渡来人の混血の程度は、どの地域でも同程度だったのでしょうか。
 東京大学大学院理学系研究科の渡部裕介特任助教と大橋順教授は、現代日本人の遺伝情報から縄文人に由来する遺伝的変異(縄文人由来変異)を検出する方法を開発し、縄文人と渡来人の混血の程度には地域差があることを示しました。さらに、縄文人と渡来人は、それぞれの生活様式に適応した表現型(見かけや特徴)を持っていたことを明らかにしました。研究の成果は、23年2月18日(米国東部標準時)に米科学誌「iScience」オンライン版に掲載されました。
 日本人のルーツと、DNA解析を用いた最新の「日本人学」を概観しましょう。
 <弥生時代の開始時期は諸説あり>
 日本列島にヒトが居住を始めたのは約3万8千年前と考えられています。約1万6千年前に縄文時代が始まると、土器を作り定住化した縄文人は日本全土に広がり、狩猟採集民でありながら非常に高い人口密度を達成しました。
 弥生時代は、渡来人によって稲作文化がもたらされ、金属器が使用されたことが特徴です。始まりは地域によって異なりますが、長らく紀元前5~4世紀頃とされてきました。けれど、国立歴史民俗博物館は03年、放射性炭素を使って弥生土器の付着物を年代測定し、紀元前10世紀とする説を提唱しました。現在は、紀元前10~8世紀と考える研究者が多いものの、開始時期については依然として意見は分かれています。
 「日本列島人は、狩猟採集民族だった縄文人の系統と、日本列島に稲作文化をもたらして定住した渡来人の系統の混血によって成立した。列島の両端に居住するアイヌと沖縄の人たちは、渡来人との混血が少なかったために縄文人の遺伝的要素を強く残した」とする「二重構造モデル」は、東大名誉教授の自然人類学者、埴原和郎博士が形態研究に基づいて91年に発表した仮説です。
 <遺伝学的に見ても妥当>
 90年代後半になると、人類学にDNA解析を用いる手法は急速に進展しました。
 『核DNA解析でたどる日本人の源流』(河出書房新社)の著書がある国立遺伝学研究所の斎藤成也教授(当時)らの研究チームは16年、東大総合研究博物館所蔵の福島県・三貫地貝塚縄文人骨の核DNAを初めて解析し、成果を発表しました。
 それまでは、縄文人骨ではミトコンドリアDNAは解析されていたものの、核DNAは技術的に難しく実施されていませんでした。ミトコンドリアDNAは母系遺伝であり、塩基数も核DNAの約20万分の1と小さいため、得られる遺伝情報は限られてしまいます。斎藤教授らのチームは縄文人の奥歯の中から核DNAを抽出し、「次世代シークエンサー」を用いて縄文人ゲノムの4%にあたる1億塩基の解読に成功しました。
 <縄文人弥生人の混血度合いを都道府県別に解析>
 その後、他の縄文人骨や弥生時代の遺跡から得られた人骨の解析が進み、二重構造モデルは遺伝学的に見ても妥当であることが示されました。次に、研究者たちが注目したのは、日本列島内での縄文人と渡来人の混血の度合いの地域差でした。
 これまでのDNA解析によって、現代の日本人の地域集団には、現代のアジア大陸の人々の集団に比較的近い集団と、それほど近くない集団があることが知られています。日本人の渡来人系の祖先集団は現代のアジア大陸の集団と近縁であることから、「現在の遺伝的な地域差は、弥生時代に起こった縄文人と渡来人との混血の度合いの地域差に起因するのではないか」と予想されていました。
 大橋教授らは21年、ヤフーが20年まで実施していた遺伝子検査サービス「HealthData Lab」に集まったデータのうち許諾の得られたものを用いて、都道府県別の縄文人弥生人の混血度合いを解析した結果を発表しました。
 1都道府県あたり50人のデータを解析すると、縄文人由来のゲノム成分の比率が最も高かったのは沖縄県で、九州や東北が続きました。対して、渡来人由来の比率が最も高かったのは滋賀県で、近畿、北陸、四国で高い結果が見られました。なお、北海道は縄文人由来の比率が高いとされているアイヌの人々が含まれていなかったため、関東と似た結果になりました。
 弥生時代に最初に渡来人が上陸したと考えられている九州北部地域よりも、近畿のほうが渡来人由来の比率が高いことは、不思議に思えます。大橋教授は「九州北部では上陸後も渡来人の人口があまり増えず、近畿などの地域で人口が拡大したのではないか」と説明しています。
 縄文人の祖先は、アジア大陸の集団から数万年前に分化し日本列島に渡ると、島国であるために長期間、大陸の集団から孤立しました。そのため、現代日本人には他の現代の東アジア人に見られない、縄文人由来の特有の遺伝的変異「縄文人由来変異」が蓄積されています。
 <中性脂肪が増えやすいのはどっち?>
 今回、大橋教授らは、現代日本人の縄文人と渡来人との混血度合いの地域差を示すために、縄文人由来の遺伝子変異の保有率に注目しました。
 まず、本土日本(日本列島人のうち本州・四国・九州)の居住者約1万人のデータを用いて、各都道府県の集団がゲノム中に縄文人由来変異を何個保有しているかをカウントすると、縄文人由来変異保有率は青森県秋田県岩手県宮城県福島県茨城県群馬県・鹿児島県・島根県などで特に高いことが分かりました。対して、近畿や四国の各県では特に低いことも示されました。また、縄文時代晩期から弥生時代にかけての人口増加率が高かった地域の集団ほど、現代では縄文人度が低いことも分かりました。
 <解析結果に見る、縄文人の3つの特徴>
 現代日本人のゲノムの中には、縄文人由来変異の集積した「縄文人に由来するゲノム領域」と、縄文人由来変異の見られない「渡来人に由来するゲノム領域」があります。研究チームは、ゲノムを2つの領域に分類し、縄文人と渡来人の表現型を推定する解析を行いました。
 解析の結果、縄文人には渡来人と比べて、①遺伝的に身長が低い、②血糖値が高くなりやすく中性脂肪が増えやすい、③白血球の一種である好酸球CRP(炎症反応で血中に増加するタンパク質)は増えにくい、という特徴が見られました。
 縄文人は、稲作文化を持つ渡来人と比べて炭水化物食への依存度が低いため、血糖値や中性脂肪を高く維持して狩猟採集へ適応していた可能性が示唆されます。一方、農耕社会を作った渡来人は、集団サイズが増し集落間の交流も多かったため、好酸球CRPを高めることで感染症への抵抗性を獲得した可能性があります。
 現在は、血糖値や中性脂肪が増えやすいと肥満の要因となり、好酸球が増えやすいと喘息の要因となることが知られています。研究チームは、本土日本では縄文人度合いの高い都道府県ほど5歳児における肥満率が高く、縄文人度合いの低い都道府県ほど喘息増悪率が高いことも突き止めました。
 研究チームはこれらの結果から、「縄文時代末期から弥生時代にかけての人口規模の地域差によって、本土日本の地域間で縄文人と渡来人の混血度合いに地域差が生まれ、現代日本人の遺伝子型や表現型の地域差となった」という「本土日本人の集団形成モデル」を提唱しました。今後、日本人の起源を探る研究において、人類学や考古学など様々な分野に影響を与える可能性があります。
 日本に現存する最古の書物は『古事記』(712年)です。縄文時代弥生時代の日本人の詳細は、文字で知ることはできません。けれど、現代日本人の体内の遺伝情報は、縄文人と渡来人の混血の歴史の証言者として、日本人の成り立ちを雄弁に語っています。
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