🪁3〕─3─何故、中国は漢民族と非漢民族で構成された一強多弱国になったのか。〜No.7 

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 2022年3月9日 YAHOO!JAPANニュース ダイヤモンド・オンライン「なぜ中国は、「漢民族と非漢民族」で構成される「一強多弱国」になったのか?
 山中俊之:著述家/コラムニスト
 ビジネスエリートの必須教養 「世界の民族」超入門
 「人種・民族に関する問題は根深い…」。コロナ禍で起こった人種差別反対デモを見てそう感じた人が多かっただろう。差別や戦争、政治、経済など、実は世界で起こっている問題の“根っこ”には民族問題があることが多い。芸術や文化にも“民族”を扱ったものは非常に多く、もはやビジネスパーソンの必須教養と言ってもいいだろう。本連載では、世界96カ国で学んだ元外交官・山中俊之氏による著書、『ビジネスエリートの必須教養 「世界の民族」超入門』(ダイヤモンド社)から、多様性・SDGsの時代の世界基準の教養をお伝えしていく。
 なぜ中国は、「漢民族と非漢民族」で構成される「一強多弱国」になったのか?
 中国は漢民族と非漢民族で構成される「一強多弱国」
 アジアの区分はさまざまで、ヨーロッパではトルコ以東はすべてアジアと考えている人もいます。日本の外務省は東アジア、東南アジア、パキスタンまでの南アジアをアジアとし、アラブやイラン、トルコはアジアに含めていません。
 日本を含む東アジアのなかで、歴史的に絶大な影響力を持つのが中国です。多民族国家でありながら、一つの民族がとてつもなく強い、これが中国の民族事情といっていいでしょう。
 960万平方キロメートルという巨大な国土に住む人口の約92%を占めるのは漢民族で、その残りが少数民族ですから、一強多弱の国です。
 少数民族のなかで、人口が多いのは、チワン族満州族回族などです。チワン族は、南部の広西チワン族自治区雲南省などに多数居住しており、民族の言葉チワン語も残っています。
 満州族は、満州と呼ばれた東北部中心に居住していますが、満州語を話す人は減り、漢民族との同化が進んでいます。
 回族は、外見や言語は漢民族と同じですが、宗教がイスラム教徒の人々です。イスラム教のことをかつて回教といいましたが、この回族からきています(イスラム教徒への配慮から現在では回教という表現は使いません)。
 しかし、中国の少数民族を考える際に忘れてはいけないのは、ウイグル人チベット人との軋轢です。いいえ、軋轢という言葉では到底言い表せない、非人道的な弾圧であり、深刻な国際問題となっています。そこで中国の民族について知るために、二つのポイントから見ていきましょう。
1.なぜ、漢民族が一強となったのか?
2.なぜ、数ある少数民族のなかで、ウイグル人チベット人が迫害されているのか?
 この2点を押さえておくと、私たちが歴史的に長らく影響を受けてきた、そして今後も経済的にも地理的にも大きく影響を受けるであろう中国という国が、民族という視点から見えてきます。
 「支配される側」だった漢民族が最強となった二つの理由
 初めて中国が統一されたのは紀元前3世紀の秦の時代。万里の長城を築いたことで知られる始皇帝が興した秦はわずか15年で滅び、楚の項羽と漢の劉邦が争って劉邦が勝利し、漢王朝ができた……この辺りは、幾多の小説や漫画、ゲームでよく知られているところ。
 前漢後漢をあわせて400年も続いた漢王朝の時代に高度な文化が発達し、この文化を担った人々を中心に漢民族と呼ばれるようになりました。
 次の晋王朝の皇帝も漢民族でしたが、その後は漢民族以外の出自とされる皇帝による隋、唐、宋、元が続きます(皇帝の出自については諸説あり)。
 14世紀に漢民族による明王朝となりますが、最後の王朝・清の皇帝は女真族満州族)でした。つまり、住民の多数である漢民族は、長い間、他民族の血統も入っているといわれる皇帝に支配されてきたのです。
 ところが、結果的に支配者である他民族のほうが、被支配者である漢民族に同化していくというのが興味深いところです。支配されることも多かった漢民族が、なぜ、今日まで中国の中心なのでしょう? 以下の二つの理由が考えられます。
1.数の力
 圧倒的に人口が多い。これが漢民族が中国の中心であり続けたシンプルかつ強力な理由です。現在、世界全人口の2割近いとされる漢民族は、秦、漢の時代は6000万人ほど。その後、他民族の支配で増減を繰り返していましたが、18世紀の終わりには2億人に達します。
 19世紀になり、清の支配下で国内が安定し、食糧事情が良くなると、4億人を突破。現在は中国、台湾、シンガポールを中心におよそ14億人の漢民族がいるとされています。
2.漢字の力
 漢民族が作り出した「漢字」は、公式文書に用いられ、文化を形成してきました。
 『老子』など現代に残る優れた思想書李白杜甫など数々の詩人が詠んだ詩歌、インドから移入され中国で翻訳された仏教の経典はどれも漢字で書かれていますし、政治の中枢たる官僚になるための最難関のテスト「科挙」では、どんな皇帝の治世であろうと、漢文のスキルが必須でした。
 彼らが残した政治的な文書はすべて漢字で記録されています。「文化人、政治家、権力者はみな、漢字ありき」――これが中国の歴代王朝の「当たり前」でした。
 もちろん領土が広大ですから、庶民の話し言葉には地方差がありました。今も北京語と広東語はかなり違う言葉です。
 しかし、書き言葉は昔から漢文で共通しており、どの地方の人でも漢字は読めます。宗教的なものではないとはいえ、圧倒的な「共通語」として機能した漢字による漢文は、コーランが書かれたアラビア語、さらに先にお話ししたラテン語と言語としての立ち位置がどこか似ています。
 漢字という文化的・言語的な最強ツールを持っていたのは、漢民族が中心であり続けた大きな理由です。
 なぜいま、「民族」を学ぶべきなのか?
 「ダイバーシティが重要」「世界の多様な価値観を理解すべき」……。このような声を聞くことが最近増えましたが、ダイバーシティやその前提となる多様な文化・価値観を理解するためには、民族について知っていることが重要です。
 なぜ中国は、「漢民族と非漢民族」で構成される「一強多弱国」になったのか?
 『ビジネスエリートの必須教養「世界の民族」超入門』山中俊之著、定価1760円、ダイヤモンド社
 しかしながら、世界96カ国を巡り、様々な国や民族の人たちと仕事をしてきた私からすると、日本人の民族への理解――いわば「民族偏差値」は、世界最低レベルだと思います。
 日本人は単一民族ではないものの、限りなく単一民族的です。みんな似ているし、争いはあまりないし、言葉もそう違わず、結婚・就職の差別も世界的に見ればとても少ない。
 ただし、多様性がないから無知になり、発想が貧しくなります。多様であることが新たな文化を育み、イノベーションのもとになるのです。
 なぜ中国は、「漢民族と非漢民族」で構成される「一強多弱国」になったのか?
 ダイバーシティSDGsが重視されるこれからの時代に向けて、もはや「民族」は必須教養です。拙著『ビジネスエリートの必須教養 「世界の民族」超入門』では、「民族」を知るために必要な材料を揃えました。
 言語、宗教、歴史、芸術文化を含む壮大なテーマではありますが、ビジネスエリートなど忙しい人たちのために、ポイントを絞ってお伝えしています。
 本書を読めば、皆さんの民族への知識はおおいに深まるでしょう。「これまでとは“世界の見え方”がガラッと変わる」。そんな書籍に仕上がっています。皆さんの助けとなる1冊となれば、著者としてこれほど光栄なことはありません。
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