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2025年10月23日 YAHOO!JAPANニュース プレジデントオンライン「親が貧乏だと学歴も就職も結婚も手に入らない…いくら努力しても貧しさの沼を抜け出せない「ヘル朝鮮」の実態
韓国社会の格差の実態はどのようなものなのか。フリーライターの菅野朋子さんは「若者たちは、親の経済力によって進学や就職が決まる理不尽な社会に苦しんでいる。地獄を意味する『ヘル朝鮮』というスラングが生まれたほどだ」という――。
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※本稿は、菅野朋子『韓国消滅の危機 人口激減社会のリアル』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
■手取りわずか11万円の「88万ウォン世代」
2000年代半ば以降、韓国では若者たちの失業と貧困が、世代に共通の問題として議論され始めていた。
IMFショックにより非正規職が急増してから10年が経った2007年には、「88万ウォン世代」という言葉が流行した。88万ウォン(当時で約11万円)は非正規職の月収の手取り額を表す。経済格差をテーマとした本のタイトルだった。
韓国ではIMFショック以降、雇用市場は大きく塗り替えられた。急増した非正規職の中でも20代の割合は高く、同書は20代の非正規職が95%になるだろうと予測した。非正規職の月収の平均額が119万ウォン(約15万円)であり、これに20代の平均給与比率0.74を乗じて推算された額が88万ウォンだった。実際には、もっとも犠牲になっていたのは、40代以降だなどの反論もあったが、当時の若者の苦境を表す言葉としてあっという間に広がった。
この頃に大学を卒業した朴はまさにこの世代に属している。日本でいう「就職氷河期世代」、欧州の「1000ユーロ世代」と重なる。
■努力をしても報われない「ヘル朝鮮」
08年にはリーマンショックが起き、青年失業率が再び大きく悪化した。この年に7.1%だった失業率は翌年8%となり、その後14 年に9.0%に上昇した後は20年まで9%台前後が続いた。
10年には、インターネットのコミュニティサイトに書き込まれた「ヘル朝鮮(チョソン)」という言葉がネット上で頻繁に使われるようになる。
努力をしても報われない、富める者だけが悠々と暮らす、理不尽な韓国社会を指した言葉だ。
■恋愛、結婚、出産を諦めた「三放世代」
翌年には、全国紙「京郷(キョンヒャン)新聞」が特集記事を組み、当時の若者を「三放(サムポ)世代」と名付けた。この言葉には、共感する声と「大人が勝手に決めつけるな」という反発の声が交錯するなど、大きな反響を呼んだ。
「三放」は、経済的な事情により恋愛、結婚、出産を諦めざるを得ないことを指した造語だ。韓国語で「諦める」は「放棄(ポギ)」。改めて、当時の特集記事「福祉国家を語る」を読むと、この時すでに、「『三放世代』の出現は福祉不在の社会で伝統的な家族形成の公式が瓦解していることを物語っている」と指摘しており、最後には「一体どれだけ努力して競争すれば未来を夢見て、恋愛を語れるようになるのか」(「京郷新聞」2011年5月11日)という20代の言葉を拾っていた。今の社会面に書かれていても全く違和感がないだろう。
三放世代はこの後、諦めざるを得ないものが年を追うごとに増えていった。就業、家に始まり、容貌の管理、健康、人間関係、そして希望……雪だるま式に膨らみ、そのたびに七放、九放と呼ばれたが、ついには無限大という意味から「N放世代」といわれるまでになる。
■金のスプーン、土のスプーン
N放世代という言葉が生まれたのは、出生率が坂道を下り始めた2015年だった。
同じ年、大学生の間では「スプーン階級論」という新造語が流行している。これは親の職業や経済力が子どもの社会的身分を決定することを指した表現で、スプーンの原材料によって階級が喩えられている。英語の慣用句「Born with a silver spoon in one’s mouth(裕福な家に生まれる)」から派生したとされ、韓国ではさらに階級が細分化された。
たとえば、財閥クラスはダイヤモンド製のスプーン。続いて、次のように並ぶ。
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・金のスプーン……親の資産が20億ウォン(約2億1000万円)以上もしくは年収が2億ウォン(約2100万円)以上。
・銀のスプーン……資産10億ウォン(約1億円)以上もしくは年収8000万ウォン(約850万円)以上。
・銅製のスプーン……資産5億ウォン(約5300万円)以上もしくは年収5500万ウォン(約580万円)以上。
・土(泥)のスプーン……資産5000万ウォン(約530万円)未満もしくは年収が2000万ウォン(約210万円)未満。
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銅と泥の間には真鍮製やプラスチック製などのバリエーションもある。日本で流行している「親ガチャ」理論に近いだろうか。親に資産がなければ、自分が努力していても、望みは実現しないという理不尽な思いがスプーンで表されている。
■塾に通えない家庭向けにつくった大学受験制度が…
こうした格差を乗り越えて階級上昇を目指す手段こそ、韓国では名門大学に入学することだった。経済的に苦しくても、良い成績を修めることで大企業への道が拓けるというのは「超競争社会」に残された一縷の光でもある。ところが、度重なる教育制度の変更により、若者はさらなる競争に追い込まれることとなった。
2008年、それまでのように一度の試験だけでポテンシャルを測ることは難しいとして、高校3年間の「学校生活記録簿」(内申)を重視する「入学査定官制度(アドミッションオフィサー制。韓国では随時入学と呼ばれる)」が導入された。ソウル大学を皮切りに、現在はどの大学でも採用されており、この制度で選抜される学生は入学者全体の6割ほどを占める。この制度を利用して大学を目指す高校生も増えた。
この「随時入学」が導入された目的は「公平性」だった。経済的な事情から塾に通うのが厳しい家庭の子どもにも機会を与えよう、というのがそもそもの趣旨だった。ところが、施行後はそれどころか、逆に新たなタイプの塾を生み出し、新たな格差をあぶり出す結果になった。
■受験に必要な「スペック」を親が情報収集
生活記録簿には、高校時代の成績や生活態度などが記載されるが、重要視されるのが“スペック”だ。学生がどんな目標を持ち、その目標を実現させるためにどのような活動をしてきたかが評価対象となる。研究者であれば、研究所で実習のインターンをしたり、弁護士を目指しているのであれば、弁護士事務所を見学したり、友人らと模擬裁判を行ったりする活動が評価を得る。
こうしたスペックは、大学によって求められる内容が異なり、親たちはその情報収集に余念がない。スペックを積むには、ネットワークが必要だ。親の職業や出身大学ごとにグループが作られ、情報交換をし、互いのネットワークを駆使して子どもにスペックを積ませるという。グループ内で交わした情報は、外には絶対に漏らさないそうだ。
■大学受験は「いかに親が情報を正確にかき集められるか」
高校2年生の子どもがいる知人が言う。
「母親の間では、随時入学での合格は戦略、といわれています。行きたい大学がどんなスペックを求めているのか、どんな勉強をすればいいのかといった情報をどれだけ正確にかき集められるかにかかっているといわれています」
彼女が居住しているのは江南三区のひとつ。ここには一般校でも優秀な高校があるが、「(一般校の生徒が)随時で大学受験をするなら成績はトップクラス(30位以内)に入らないと、先生がほとんどケアしてくれないらしい。だから、結局、一般の試験を受けることになる」と続ける。
彼女の子どもは私立の進学校に通っている。この場合、成績がトップクラスではなく多少振るわなくとも、見栄えのするスペックによって名門大学に進むことも可能となるそうだ。
しかし、私立の進学校の場合、授業料は一般校の4〜6倍ほどになる。成績がよくても経済的な理由からそうした進学校に通えない子どもたちもいる。彼らは一般校に進み、懸命に勉強を重ねるほかない。そこでも、塾に通える子どもと通えない子どもの差もある。
前出の知人は言う。
「勉強もそうですが、大学入学の条件などの情報をいちばん持っているのは塾ですから、いくら批判されても塾に通わせないなんて現実的には無理なんですよ」
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菅野 朋子(かんの・ともこ)
フリーライター
1963年生まれ。中央大学文学部卒業。カナダ、韓国に留学後、出版社勤務、「週刊文春」記者を経て現在はフリーライター。2004年より韓国に在住し、韓国社会の「本音」を日本に発信し続けている。著書に、『。韓国発! 日本へのまなざし』(文春文庫)、『ソニーはなぜサムスンに抜かれたのか 「朝鮮日報」で読む日韓逆転』『韓国エンタメはなぜ世界で成功したのか』(いずれも文春新書)、『韓国窃盗ビジネスを追え 狙われる日本の「国宝」』(新潮社)などがある。
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