☶57〕─3─岸田首相が焦り「訪朝計画」の危うさ。~No.463No.464No.465 

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   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・   
 新保守の安倍晋三元総理は外交能力は世界レベルであったが、エセ保守やリベラル左派の外交能力は稚拙で世界に通用しない。
 つまり、安倍晋三元総理亡き現代日本の外交能力は敗戦後の日本に近い。
 「日本は外圧に弱い」は、日本民族の歴史、戦前までの日本ではなく、敗戦後の日本、現代の日本の事である。
 外国語を饒舌に話せる事が外交能力ではなかった、問題は国家像、志であった。
 それこそ、江戸時代後期から明治にかけての日本人の方が、数段と優れていた。
 中国・韓国・北朝鮮に対する外交姿勢を見れば一目瞭然である。
 エセ保守やリベラル左派は、反米的な親中派媚中派、親韓国派、親北朝鮮派である。
 メディアや教育もそうと言える、そのわけは靖国神社問題、第二回南京事件問題、従軍慰安婦・徴用工問題、関東大震災などにおける発言を見れば明らかである。
 彼らの主張は、日本の国益や名誉・体面を守る事のない、両国の友好、ウインウインの関係である。
 譲歩外交。軟弱外交。お飾りのサイレント日本人。
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 2024年4月2日17:00 YAHOO!JAPANニュース 夕刊フジ「岸田首相が焦り「訪朝計画」の危うさ 北朝鮮、打診暴露は会談への〝奇策〟拉致問題、政治的窮地で「下手に動く」恐れ
 岸田首相は、金正恩総書記(下、朝鮮中央通信=共同)と会談に臨み、全拉致被害者を奪還できるのか。
 【ニュースの核心】
 岸田文雄首相は28日、2024年度予算成立を受けて官邸で記者会見を開いた。北朝鮮金正恩キム・ジョンウン)総書記との会談について、「引き続き、私直轄のハイレベルでの対応を行っていきたい。拉致問題をはじめとする諸懸案解決に向けて動かしたい」と語った。拉致被害者や被害者家族が高齢化するなか、日朝首脳会談による「全被害者の即時一括帰国」が期待される。ただ、北朝鮮側は「拉致問題は解決済み」という主張を取り下げていない。外交は機を逃してはならないが、成果を焦って急いては事を仕損じる。ジャーナリスト、長谷川幸洋氏が、岸田首相が模索する訪朝計画の危うさに迫った。
 【グラフィックで見る】政府が認定した日本人拉致被害者(未帰国)
 北朝鮮金正恩総書記の妹、金与正(キム・ヨジョン)労働党副部長が岸田首相のを一方的に暴露したかと思えば、翌日には一転して「交渉を拒否する」と発表した。この展開をどうみるか。
 与正氏は25日、談話で「岸田首相から『できるだけ早い時期に直接、会いたい』という打診があった」と発表した。与正氏は「(日本が)拉致問題に没頭するなら、首相の(訪朝)構想は人気取りに過ぎない。これ以上、解決することはない」と牽制(けんせい)している。
 これに対して、林芳正官房長官が「まったく受け入れられない」と反論すると、与正氏は翌日、「日本側とのいかなる接触も交渉も無視し、拒否する」と応じた。以上が、これまでの経過である。
 なぜ、与正氏は、岸田首相の訪朝打診を暴露したのか。
 実は、彼女は1カ月前の2月15日にも、日朝関係について前向きに語っている。「あくまで個人的な見解」と断りながら、「拉致問題を障害物としなければ、首相が平壌を訪問する日が来ることもあり得る」と表明していた。
 「キューバと韓国」国交樹立に反応
 岸田首相は2月9日、衆院予算委員会で日朝関係の現状を変える必要性を語っていた。そこから、「北朝鮮は首相発言に反応した」という見方も出たが、それは甘い。
 そうではなく、私は「北朝鮮は2月14日に発表された、キューバと韓国の国交樹立に反応した」とみる。
 北朝鮮にとって、キューバは数少ない友好国、兄弟国だ。それが仇敵の韓国と国交を結ぶとは、大ショックだったに違いない。反米の同志であるキューバが韓国に接近したとなれば、自分も日本との関係改善に活路を見いだそうとしても不思議ではない。
 今回、与正氏が日本にボールを投げてきたのは、それほど日本との関係改善を切望している証拠とみるべきだ。
 メロドラマ風に言えば、「私が『会ってもいい』というサインを送ったのに、あなたはいつまで放っておくのか。『会いたい』と最初に言ったのは、あなたでしょう」という話である。
 つまり、待ち切れなくなって、ラブレター公開という奇策に打って出たのだ。
 そうだとすれば、与正氏が自ら暴露した会談を拒否して、強気を装ったとしても、岸田首相が慌てる必要はない。むしろ、下手に動けば、相手の術中にはまるだけだ。
 私は「岸田首相が下手に動いてしまう事態」を心配している。いま政治的窮地に陥っているのは、首相の側であるからだ。「政治とカネ」の問題はもちろん、最近では、政府の有識者会合(内閣府のタスクフォース)に中国国営企業のロゴが入った資料が提出されていた事件も起きた。
 そんななかで、起死回生の一発逆転を狙って「訪朝で成果を上げよう」と焦れば、逆につまずく展開になりかねない。例えば、数人の拉致被害者の生存が確認できたら、それで食料支援するのか。残りの日本人はどうなるのか。
 北朝鮮は、岸田首相が政治的に瀕死(ひんし)状態であるのは、織り込み済みだ。だからこそ、危ない。拉致問題の解決は「時間との戦い」になっている。だからといって、岸田首相の政治的延命のために拉致問題を利用してはならない。
長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務めた。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア―本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。ユーチューブで「長谷川幸洋高橋洋一のNEWSチャンネル」配信中。
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 4月2日 YAHOO!JAPANニュース 現代ビジネス「北朝鮮鬼姫・金与正「日朝交渉拒絶」談話に狼狽えるな…何せ相手は「3日後に何が起こるか分からない国」だから
 サッカー日本代表の入国拒否
 いまから35年も前、私がまだ駆け出しだった頃、ソウルで著名な北朝鮮専門家から、こう諭されたことがあった。
 【写真】こんな北朝鮮、見たことない…!写真家が29年撮り続けた“未知の国”の日常
 「わが国(韓国)は、3年後に何が起こるか分からない国だ。だが北韓(北朝鮮)は、3日後に何が起こるか分からない国だ。それには吉事も凶事もあるが、とにかく一寸先も読めないのが、北韓という国なのだ。だからあの国を見る時は、いつも心の片隅に諦念を持ちながらも、あくせくしないことだ」
 先週の日本と北朝鮮の様々な「応酬」を見ていて、まさにこの箴言を思い起こした。まずは日本にとって「吉事」から述べよう。
 3月23日に若い宮本恒靖会長(47歳)体制に代わった日本サッカー協会が、30日、「FIFA規律委員会の決定について」と題した発表を行った。
 〈 3月26日に開催予定だったFIFAワールドカップ26アジア2次予選 兼 AFCアジアカップサウジアラビア2027予選 朝鮮民主主義人民共和国代表対SAMURAI BLUE(日本代表)の試合中止を受けて、3月30日、FIFA規律委員会よりこの試合は0-3で朝鮮民主主義人民共和国代表の敗戦として没収するとの決定が通知されました 〉
 朝鮮民主主義人民共和国とは、北朝鮮のことだ。予選はホーム&アウェイ方式で行われるが、3月21日に東京・国立競技場で行われたホーム戦は、周知のようにMF田中碧(デュッセルドルフ)が前半2分に決めた得点(実に考え抜いた鮮やかなシュートだった! )を、日本が守り切って、1-0で勝利した。
 次のアウェイ戦は、26日に平壌金日成(キム・イルソン)スタジアムで行われる予定だったが、北朝鮮側が日本代表の入国を、突然拒否。第三国での開催を模索していたが、調整がつかなかった。
 拒否した理由は、東京で起こっている感染症を恐れたという説が有力だ。『東京新聞』(3月22日付)はこう報じている。
 〈 東京都内で今年、極めて致死率が高い「劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)」の患者数が、過去最多だった昨年を大きく上回る勢いで増加している。都は手足の痛みや発熱などの症状がある場合、すみやかに医療機関を受診するよう呼びかけている。
 22日の都感染症対策連絡会議で報告があった。2024年の患者は17日時点で88人。141人だった23年と比べ3倍のペースで感染が確認されている。23年は約3割の42人が死亡した(以下略) 〉
 日本では小林製薬問題一色でスルーされているが、韓国ではこのニュースを大々的に報じた。それに北朝鮮が、「すわ、コロナ禍が再現されたら大変だ」と過剰に反応した。でも、他の理由もあったのかもしれない。
 ともかく、就任したばかりの宮本会長は、北朝鮮の突然の言動に当惑しながらも、3月30日にこう述べた。
 「3月26日に平壤で試合が行われなかったことについて、日本時間の本日(30日)未明にFIFA規律委員会の決定内容を受け取りました。この試合の取り扱いに関するステイタスが更新されたことは良かったと思います。
 ワールドカップ予選突破に向けて、森保監督やスタッフ、選手たちには引き続き良い準備をして試合に臨んで欲しいですし、JFAとしてもしっかりとサポートをしていきます」
 つまり、FIFAの裁定により、2試合合わせて日本が3-0で勝利したことにされたのだ。
 ここまでが「吉事」で、ここからは「凶事」である――。
 朝鮮中央通信「金与正談話」が意味するもの
 日本の一部関係者の間で「鬼姫」という隠語で呼ばれている金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党副部長が、3月25日に朝鮮中央通信を通して談話を発表した。
 金与正副部長は、言わずと知れた北朝鮮の独裁者、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の唯一の妹で、事実上のナンバー2だ。彼女が日本に向けて談話を発表したのは、2月15日以来のことだった。
 朝鮮中央通信の「朝日首脳会談は日本首脳の政治的勇断が必要」と題した「金与正談話」の全文は、以下の通りだ。
 〈 先月、私は日本の岸田首相が国会で、朝日首脳会談の問題に意欲を示したことに対して、個人的な所見を明らかにしたことがあった。
 最近にも岸田首相はまた別の経路を通して、可能な早い時期に、朝鮮民主主義人民共和国国務委員長と直接、会いたいという意向を、われわれに伝えてきた。以前にも述べたように、朝日関係改善の新たな出路を切り拓くのに重要なことは、日本の実際的な政治的決断なのだ。
 単純に首脳会談に臨もうという心持ちだけでは、不信と誤解で満ち溢れた両国の関係を解きほぐすことができないのは、これまでの朝日関係の歴史が与えた教訓である。
 日本がいまのようにわれわれの主権的権利の行使に干渉しようとして、もはや解決済みで知る由もない拉致問題に依然として固執するならば、首相の構想が人気取りに過ぎないという評判を避けられないことになる。
 明白なのは、日本が朝鮮民主主義人民共和国を、常に敵対視し、主権的権利を侵害する時には、われわれの敵とみなされ、夜のとばりが下りてしまう。そしてそこから抜け出すことはできないということだ。
 心から日本が両国の関係を解きほぐし、近い隣人になり、地域の平和と安定を保障するのに寄与したいのであれば、自国の全般的な利益に符合する戦略的な選択を行う政治的英断を下す必要がある。
 公正で対等な姿勢で、われわれの主権的な権利と安全利益を尊重するのならば、朝鮮民主主義人民共和国の自衛力強化は、どんな場合にも日本に安保上の脅威を与えないことであろう。
 (岸田)首相は、わが政府の明白な立場を知って言動を行わねばならない。自分が望むから、決心したからと言って、わが国家の指導部と会うことができるとか、会ってやるとかいうのではないことを、(岸田)首相は分からねばならない。
 主体113(2024)年3月25日 平壌(完) 〉
 以上である。この中で気になるのは、「最近にも岸田首相はまた別の経路を通じて」という語句である。
 最近の日朝関係については、2月20日アップした本コラムで詳述した通りだ。

                  • -

 参照)「日朝首脳会談」実現に向けて整った「4つの好条件」…北朝鮮からの“異例のサイン”に岸田首相はどう応えるのか? ----------
 岸田首相は現在、何らかのルートを通じて、北朝鮮とのパイプを築いている。そのことは、下記の自身の発言から明らかだ。
 「日朝平壌宣言に基づき、北朝鮮との諸問題を解決するためにも、金正恩委員長との首脳会談を実現すべく、私直轄のハイレベルでの協議を進めてまいります」(1月30日の施政方針演説での発言)
 「私が自ら必要な判断を行います。具体的にさまざまな働きかけを行っております。そういった現状であります。昨今の日朝関係の現状に照らし、大胆に現状を変えなければならない必要性を強く感じています。私自身が主体的に動いて、トップ同士の関係を構築して参ります」(衆院予算委員会での答弁)
 ところが金与正副部長は、「最近にも岸田首相はまた別の経路を通じて」と述べている。これは一体、何を意味するのか? 
 「もう一つの代表メンバー」が来日していた?
 最近あった「日朝関係」と言えば、思い当たるのは、冒頭で記したサッカーの「FIFAワールドカップ26アジア2次予選 兼 AFCアジアカップサウジアラビア2027予選」しかない。
 3月21日に国立競技場で行われたゲームには、日本中が釘付けになったが、その裏で北朝鮮から来日した「もう一つの代表メンバー」が、岸田政権と「交渉」していた可能性がある。
 さらに、26日に平壌で行われる予定だった試合のため、日本から当然、「先遣隊」が現地入りしているはずだから、そこに「交渉チーム」も加わっていた可能性がある。
 サッカーの試合は中止となったが、日朝交渉は「開催」された。そうしたことを「与正メッセージ」は示唆しているのかもしれない。
 ともあれ、この「鬼姫談話」は、日本で大きな反響を呼んだ。談話が発表された3月25日午後の林芳正官房長官の記者会見では、異例なことに延べ5人もの記者が、北朝鮮問題について次々に質問。林官房長官の回答は、それぞれ以下の通りだった。
 (金与正談話について)「金与正副部長が再度、談話を発出したことは承知しております。岸田総理はこれまでも、北朝鮮との間の諸懸案の解決に向け、金正恩委員長との間で首脳会談を実現すべく、総理直轄のハイレベルで協議を進めていきたいと述べてきておられます。そのために様々なルートを通じて、働きかけを絶えず行ってきているところであり、引き続き取り組みを進めていく考えでございます」
 (拉致問題の扱いについて)「北朝鮮側の発表の一つ一つにコメントすることは差し控えたいと思いますが、拉致問題がすでに解決されたとの主張は、まったく受け入れられないと考えております。わが国としては日朝平壌宣言に基づき、拉致・核・ミサイルという諸懸案を包括的に解決するという方針に変わりはないということでございます。
 岸田総理はこれまでも、北朝鮮との間の諸懸案の解決に向けて、金正恩委員長との間の首脳会談を実現すべく、総理直轄のハイレベルで協議を進めていきたいと述べてきておられます。そのために様々なルートを通じて働きかけを絶えず行ってきておりますが、それ以上の詳細については今後の交渉に影響する恐れがあるため、明らかにすることは差し控えたいと考えております」
 (核・ミサイル問題にについて)「北朝鮮側の発表の一つ一つについてコメントすることは差し控えたいと思いますが、わが国としては、日朝平壌宣言に基づき、拉致・核・ミサイルといった諸懸案を包括的に解決するとの方針に変わりはございません。岸田総理はこれまでも、北朝鮮との間の諸懸案の解決に向けて、金正恩委員長との首脳会談を実現すべく、総理直轄のハイレベルで協議を進めていきたいと述べてきておられます。
 様々なルートを(通じて)そのために働きかけを絶えず行ってきておりますが、それぞれの詳細については今後の交渉に影響を及ぼす恐れがあるため、明らかにすることは差し控えたいと考えております」
 (金正恩委員長からの能登半島地震のお見舞いの電報に対する返信について)「政府としては引き続き、被害に遭われた方への対応に全力で取り組んでいるところでございまして、各国首脳等からのお見舞いのメッセージの逐一に対して、返信等は現時点で行っていません。いずれにしても日朝間のやり取りについては、ご指摘のメッセージに対する対応も含めて、事柄の性質上、お答えを差し控えたいと考えております」
 (可能な限り早期の日朝首脳会談について)「岸田総理はこれまでも、北朝鮮との間の諸懸案の解決に向け、金正恩委員長との首脳会談を実現すべく、総理直轄のハイレベルで協議を進めていきたいと述べてきております。そのために様々なルートを通じて働きかけを絶えず行ってきておりますが、ご質問の点を含めて、それ以上の詳細については、今後の交渉に影響を及ぼす恐れがあるため、明らかにすることは差し控えたいと考えております」
 ところがここから、事態は「急変」していく。北朝鮮側が、林官房長官の2番目の拉致問題に関する回答に、敏感に反応したのだ。
 「朝日首脳会談は、われわれの関心事ではない」
 金与正副部長が3月26日、前日に続いて再び日本に向けた談話を発表したのである。朝鮮中央通信の見出しは、「金与正副部長、日本側との接触、交渉を拒否」。「鬼姫」の本領発揮とも言える内容で、その全文は、以下の通りだ。
 〈 日本側は25日午後、内閣官房長官の記者会見を通して、拉致問題が解決済みということに対して、絶対に受け入れることができないという立場を明白にした。あるいは彼ら(日本)とは何の関係もない、核やミサイル懸案とかいう表現をこね繰り出して、われわれの正当防衛に属する主権の行使に干渉し、問題視しようとした。
 日本は歴史を変えて地域の平和と安定を企図し、新たな朝日関係の第一歩を踏み出そうという勇気がまったくない。解決すべきものを解決もできず、また解決することもない克服不可能な問題を握りしめている日本の態度が、そのことを物語っている。
 最近何度か周囲の耳目を引いた岸田首相の朝日首脳会談関連発言は、自己の政治的目的によるものと見ることができる。史上最低水準の支持率を意識している日本の首相の政略的な打算に、朝日関係が利用されてはならない。
 「前提条件なしの朝日首脳会談」を要請し、先に門を叩いてきたのは日本側であるのに、ただわれわれは、日本が過去にとらわれず新たな出発を行う姿勢があるのであれば、歓迎しようという立場を明らかにしただけだ。
 わが政府は、日本の態度をもう一度、明白に把握したのであり、それによる結論は、日本側とのあらゆる接触も、交渉も無視し、拒否するものである。朝日首脳会談は、われわれにとって関心事ではないのだ 〉
 このように、大変手厳しい口調に突然、変化したのだ。さらに、ダメ押しのような朝鮮中央通信の報道が続いていく。3月29日、崔善姫(チェ・ソンヒ)外相の日本向け談話が発表された。
 〈 岸田日本国首相が「拉致問題」に再び言及し、朝日間の様々な懸案の解決に向けて、従来の方針のもとで引き続き努力していくという立場を明らかにした。
 現実を必死に拒否し、取り繕いながら、実現することができないこと、解決する方法がない問題に執着し、最後まで固執する理由に対して、理解することができない。われわれは日本が言ういわゆる「拉致問題」と関連して、解決してやることもないばかりか、努力する義務もなく、またそのような意思もまったくない。
 もう一度、明白に強調しておこう。
 朝日対話はわれわれの関心事ではなく、われわれは日本のそのような接触の試図に対しても、許容しないことにする。そして、日本がわれわれの主権行使を妨害し、干渉することに対しては、常に断固として対応していく。
 これがわれわれ共和国(北朝鮮)政府の立場だ。
 主体113(2024)年3月29日 平壌(完) 〉
 同日、朝鮮中央通信は「おまけ」も付けた。タイトルは、「李龍男駐中国朝鮮大使が、日本側と会うことはない」
 〈 28日、中国駐在の日本大使館関係者が、わが大使館参事官に電子メールで接触を開始してきた。われわれは日本側と、会うつもりはない。私は朝鮮民主主義人民共和国が日本側と、そのような性急に会うことはないという立場を、いま一度明白にする(完) 〉
 このように、北京の日本大使館からメールで連絡があったことまで暴露してしまった。これでは、今後日本から何らかのアプローチを北朝鮮に取ったら、そのルートや内容まで暴露されかねない。
 そのため、日本としては動きづらくなった。北朝鮮側からすれば、それを見越して「動くな」と言ってきているとも受け取れる。
 まことに困った相手だ。こんな時は、冒頭の箴言に耳を傾けるのも一考かもしれない。
 「北朝鮮は、3日後に何が起こるか分からない。いつも心の片隅に諦念を持ちながらも、あくせくしないことだ」
 (連載第721回)
 近藤 大介(『現代ビジネス』編集次長)
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