🗾14〕─4─アニメを通して語り継ぐ「日本人と海との関わり」。~No.70 

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 2024年4月15日 YAHOO!JAPANニュース アニメージュプラス「【海ノ民話】アニメを通して語り継ぐ「日本人と海との関わり」
 ▲(左から)勝木友香さん、久保華誉さん、海野光行氏、永井紗耶子さん、加納さん。
 日本財団「海と日本プロジェクト」の一環として一般社団法人日本昔ばなし協会が推進する「海ノ民話のまちプロジェクト」では、日本各地に伝わる海にまつわる民話を、2018年のスタートから2022年までの5年間で実に42本もアニメ化してきた。
3月24日(日)に2023年に新たに制作された25本の「海ノ民話アニメーション」の上 映会が開かれたが、続く25日(月)には各会の有識者による「公開シンポジウム『海ノ民話』から学ぶもの ~作家・芸人・学者の視点から~」も東京・文藝春秋ホールにて開催された。
 【関連画像】シンポジウムの様子や作品ビジュアルを見る(写真12点)
 “次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人がつながる” というスローガンを掲げる「海と日本プロジェクト」の一環として制作されているのが「海ノ民話」アニメーション。自然との調和や、生活の知恵や教訓など、時代を超えて語り継がれてきた、日本に生きる人と海との関わりを、さらに次世代へとつなげていくという壮大なプロジェクトだ。
 そうした「海ノ民話」について、プロジェクトの舵取りを担う公益財団法人 日本財団 常務理事の海野光行氏に加え、各界からの有識者を招いて様々な視点から議論を交わそうというのがこのシンポジウムの主眼だ。
 パネリストとして登壇したのは、小説家の永井紗耶子さん、お笑いコンビ「Aマッソ」の加納さん、日本昔話学会委員の久保華誉さん。司会は放送作家・脚本家の勝木友香さんが務めた。
◆パネリストプロフィール◆
 久保華誉さん
 日本昔話学会委員/1975年生まれ、静岡県出身。主な著書に『なぜ炭治郎は鬼の死を悼むのか―昔話で読み解く『鬼滅の刃』の謎』(草思社、2023年)、『日本における外国昔話の受容と変容―和製グリムの世界』(三弥井書店、2009年)などがある。
 永井紗耶子さん
 小説家/1977年生まれ、神奈川県出身。新聞記者、フリーランスライターを経て2010年『絡繰り心中』で小学館文庫小説賞を受賞し、作家デビュー。2023年『木挽町のあだ討ち』で第169回直木賞を受賞。
 加納さん
 芸人/1989年生まれ、大阪府出身。ワタナベエンターテインメント所属。2010年、幼馴染のむらきゃみとともにお笑いコンビ「Aマッソ」を結成、ネタ作りを担当。テレビやラジオなどでも活躍するほか執筆活動などマルチな才能を発揮する。
 シンポジウムは「現代人と海との距離感について」「海ノ民話が持つ価値について」「民話が持つ時代性と普遍性について」「海ノ民話をどのような表現媒体で伝えていくか」「海ノ民話の活用法と文化的価値について」という5つのテーマで進行した。
 冒頭では海野氏より、全国に伝わる民話は約2000あると言われており、そのうちの約2割が海にまつわるものだが、資料が散逸したり語り部が減ったことによってその存続が危ぶまれる中、受け継がれてきた「海ノ民話」を次世代へと継承することがプロジェクトの主眼であるとの説明があった。
 続いて、パネリストそれぞれが印象に残った作品をセレクト。永井さんは「輪郭線が淡くて蛇たちの動きも可愛らしい」と『虻が島の大蛇』(富山県 氷見市/2022年度)、「螺鈿のような幻想的な絵柄で統一された芸術的作品」と『海の姫宮の旅』(山口県 岩国市/2022年度)の2作品を挙げていた。
 『ゼンパはん』(徳島県 小松島市/2021年度)を選んだ久保さんは「海坊主と主人公のゼンパはんとの問答が昔話らしい語り口で楽しかった」とその理由を語った。
 加納さんが選んだのは『お屋敷になったクジラ』(和歌山県 串本町/2020年度)。「捕ったクジラが木材になるという、昔話らしい飛躍があるのが面白い」と芸人ならではの視点を披露した。
 また、司会の勝木さんも気になった作品を2つピックアップ。『おたるがした』(愛媛県 松山市/2019年度)には「どんな境遇に陥っても人間には立ち上がる力があるということが感じられる」と、民話から得られる「学び」に注目していた。さらに、『海に沈んだ鬼』(高知県 中土佐町/2023年度)については、「自然の脅威と人間の無力さが感じられ、人間を救うために身を投げ出す鬼の自己犠牲の精神にも感銘を受けた」と語った。
 さらに、実際に会場で『神割り岩』(宮城県 南三陸町/2023年度)の上映も行われた。
 多岐にわたるテーマについて小説家、芸人、民話研究者というそれぞれの視点からの鋭い意見が次々と飛び出したシンポジウムは意義深いものとなった。2018年にスタートした「海ノ民話のまちプロジェクト」は今年で7年目を迎える。これまでに制作されたアニメーションは67作品、ほとんどの都道府県をカバーしており、興味深いのは長野県や山梨県など内陸で「海がない」県にも「海ノ民話」は伝わっているのだ。それはつまり、日本人にとって海からの恵みがどれだけ重要なものであったかということを物語っている。
 それはまた、日本人の心の奥底には共有されるひとつのルーツとして「海」というものが存在している、と言い換えることもできるだろう。そうした伝承をアニメーションという形で語り直し、また各地の名産品とのコラボなどで文化振興や町おこしなどにもつながっていく「海ノ民話」には、まだまだ大きなポテンシャルが秘められている。
今回はシンポジウムの中で話題に上ったいくつかの作品を場面写真とともに紹介したが、これ以外にも数多くの魅力的な作品が揃っているので、興味を持った方はぜひ観てほしい。
 (C)2018-2023 一般社団法人日本昔ばなし
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