☵37〕─1─韓国に追い抜かれる日本。平均賃金や一人当たり実質GDPも。~No.305 

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   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・  
 2022年1月22日 MicrosoftNews 日刊SPA!「韓国に追い抜かれる日本。平均賃金や一人当たり実質GDPも…韓国人の本音は?
 近年、さまざまな経済指標で「日本の独り負け」が目立つ一方、隣国・韓国は緩やかに経済成長を続け、日本を追い抜こうとしている。現地で緊急インタビュー!
◆日韓逆転を実感しつつも格差拡大への不安も残る
 平均賃金や一人当たり実質GDPなど、さまざまな経済指標で日韓の逆転が始まっている。
 数字で見る両国の競争力の逆転・拮抗状況は顕著だ。世界競争力年鑑2021(IMD)では日本が31位で韓国は23位、世界製造業競争力指数(’20年、国連産業開発機構)も日本は5位で韓国は3位となった。日本経済研究所の試算によれば、’27年には一人当たり名目GDPでも韓国は日本を追い抜くと予想しており、日韓逆転の流れはやみそうにない。
 政府や経済界は危機感を募らせているが、多くの国民も「失われた30年」を嘆き、日本経済の行く末を本気で心配する視点や議論が頻繁に見られるようになった。
 出典:OECD、Big Mac index、S&P Global Ratings© 日刊SPA! 出典:OECD、Big Mac index、S&P Global Ratings
◆隣国の衰退を憂う声
 一方の韓国はどうだろう。一部メディアからは逆転を誇る声が聞こえてくる。直近でも、「もはやアジアの先導国・韓国、日本の経済指標を追い越す」(『moneyS』’21年12月20日付)、「日本、韓国に追い越され、20年後はGDP2倍差で逆転」(『アジア経済』’21年12月16日付)などの見出しが躍る。
 また「21世紀の日本の三種の神器」(『朝鮮日報』’21年9月4日付)はFAX、印鑑、紙文化がいまだ根強い日本の実情を強烈にディスり、DX化に対応できない日本企業に同情する内容となっている。
 反日的な言動が紹介されることの多い韓国の掲示板においても「我々は日本人より優秀だ!」という書き込みがある一方、どちらかというと同情する意見のほうが多い。「日本も大変そうだ」「最近の経済状況を見ると、実質的に国が亡びている状態」と隣国の衰退を憂う声が増え始めている。
◆「日本の働き方はとてもアナログ」
 では、実際に韓国の人々は経済逆転についてどんな印象を抱いているのだろうか。今回、首都ソウルで現地記者の協力の下、街頭インタビューを敢行。幅広い年齢層の方から話を聞くことができた。
 まず取材に応じてくれたのは、テレビ番組のディレクターをしているという30代の男性だ。
 「日本で長く生活したことがないので単純な比較は難しいですが、韓国の平均物価や所得は以前よりは高くなっている。相対的に韓国経済が発展した実感はある」
 就活中の女子学生・Aさん(20代)、会計士として働く30代後半の女性・Bさん、中小企業の経営者・Cさん(40代後半・男性)は、それぞれこう答えた。
 「私や周囲の人は、意識的に日本ブランドを使わなくなった。どんな製品でもより優れた韓国ブランドがあるから。実際に経済的に日本を上回ったという数値が出てくると、国力が上がったと実感できて嬉しいです」(Aさん)
 「象徴的な部分では韓国のほうが進んでいると感じる。日本の働き方はとてもアナログ。印鑑を押す商習慣が非効率的と指摘されたので『印鑑を押す機械』を開発したという日本のニュースを聞いて驚きました。韓国は“パルリパルリ文化”(早く早く文化)の影響もあり、IoT化や第4次産業革命が本格化した。日本はDX化が遅れていると強く感じます」(Bさん)
 「この20年間、年に1~2回訪日しています。東京や大阪のような大都市では、お客さんに親切だった日本人の伝統が消えかけている気がします。生活から余裕がなくなっていると感じた」(Cさん)
◆「エンタメ分野では日本を完全に超えた」
 なお、多くの人の意見が一致した点は、エンターテインメントやポップカルチャー分野で「完全に日本を追い抜いた」という実感だ。
 「以前より日本の歌やドラマ、映画に接する機会が減ったのは確か。昔は日本のドラマに登場する俳優についてよく知っていたが、最近は全然わからない。韓国映画やドラマ、ショー番組の人気が海外でも高いですし、エンタメ分野では日本を完全に超えたと感じますね」(翻訳家・30代後半・女性)
 「BTSやブラックピンク、イカゲームなど世界における韓流コンテンツの影響は日本より高くなったのは明らか。ただ漫画やアニメは、まだまだ日本が大きな力を持っていると思う」(映像編集業・20代後半・男性)
◆物価の上昇で貧富の格差が拡大する韓国
 しかし、一方で日韓逆転を実感できないという声も。
 「コロナ禍以降、世界中の経済がマヒした状況なので単純比較は難しい。実生活では日本との経済逆転は感じにくい」(会社員・40代前半・男性)
 「物価水準や流通する商品のクオリティ、消費水準は日本に近づいていると思う。ただ、不動産価格や雇用の柔軟性など、韓国は急速に欧州先進国に近づきつつあり、貧富の差がさらに拡大するのではと国民の大多数が危機感を抱いています」(前出・Cさん)
 「若い人は一生懸命働いてもお金が貯められず、就活に失敗し、非正規の道に進むことも多い。非正規雇用労働者の割合はどんどん増えているのに、生活コストは右肩上がり。この状況は改善されない。競争社会という意味では韓国は日本より熾烈です」(大学生・20代前半・男性)
 韓国の格差社会は日本以上といわれており、数年前には「ヘル朝鮮」という言葉がはやったことも。不動産価格や物価の急激な上昇により、成長を実感しにくい国民も少なくないようだ。
◆他の先進国や新興国に追い越されるのも時間の問題
 日韓の経済逆転について専門家はどう見るか。経済評論家・加谷珪一氏は言う。
 「日韓の逆転が象徴的に捉えられていますが、他の先進国や新興国にも追い越される、もしくは差が縮まるのは時間の問題です。最大の原因は輸出額の低下とデジタル化の遅れ。特に後者は致命的で、’90年代後半から他の先進国のデジタル投資額が官民合わせて2~3倍になっているのに、日本はずっと横ばい。結果、企業の国際競争力が低下しています。デジタル化はインフラ整備よりも容易で即効性がある。ペースを上げて取り組むべきです」
 今回の韓国取材で興味深かったことは、「日本に勝った!」とナショナリズム丸出しの意見がほぼなかったこと。むしろ多くの韓国人は自省気味かつ冷静に現実を分析していた。「韓国に学べ!」と言わないまでも、先入観を捨て隣国の意見に耳を傾けてみれば、そこに日本経済の復活へのヒントが隠されているかもしれない。
◆「若者の時代」の到来を日本だけが知らない
 世界市場を分析するマーケティングアナリスト・原田曜平氏は、カルチャーや経済における日韓逆転について、かねてから指摘してきた人物のひとりだ。
 「日本企業の多くは長らく国内市場に目を向け、所得が多い中年以降の世代をターゲットにしてきた。一方、内需が小さい韓国は早くから国外に目を向け、若者世代の需要を取り込むためマーケティングに注力してきた。
 そして今、東南アジアや中東、アフリカ、移民が増えている欧州などを含む世界には、『若者の時代』が到来しています。20~30代はネットで同じコンテンツに触れ、国境を越えて消費傾向も似通っている。そこで、韓国企業のプレゼンスが高まっているというのが実情。韓国企業の狙い通りかどうかは別として、日本企業としては分析の正しさは理解すべきです」
◆韓国カルチャーに憧れる日本の若者
 日本では、世界のエンタメ市場は規模が大きくない、という“慰めの分析”が一部専門家から聞こえてくるが、日本の若者だけが現実を知っているようだ。
 「カルチャーにしても、韓国の40代以下の人は日本に文化的憧れがなく、反対に日本の20~30代の若者は韓国カルチャーを最も身近に感じているのが現状です。日本に残された道は、事実を直視して認めるか、もしくは『ジャパン・アズ・ナンバーワン』の幻想とともに衰退し続けるかのどちらかです」
 経済逆転から「若者軽視」「過去の栄光に囚われた思考」「内向きマーケティング」など、日本経済の病巣が透けて見える。
 【原田曜平氏
 ’77年生まれ。博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーなどを経て、マーケティングアナリストとして活躍。著書に『ヤンキー経済』『新・オタク経済』『Z世代』など
 取材・文・撮影/Chong Ryu(韓国) 河 鐘基」
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