☷39〕─1─外国人労働者が日本でなく韓国を選ぶ理由。~No.97No.98 

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 2023年12月10日 YAHOO!JAPANニュース Wedge(ウェッジ)「韓国津々浦々の外国人労働者、日本でなく韓国を選んだ理由
 『2023.7.3~9.20 80日間 総費用26万円(優待航空券1万5000円含む)』
 日曜の朝ママチャリに乗った南アジア系青年たち
 7月9日。水原スウォンから華城ホアソンへ向かうサイクリングロードでママチャリに乗ったバングラデッシュ出身の青年と出会った。来韓して10カ月というが、ハングルは日常会話なら問題ないレベル。近くのアルミ加工工場で働いている。日曜日なので町に買い物に行く途中だった。会社の寮には8人のバングラ出身者が住んでいるという。
 それから1キロも走らないうちにやはり中古のママチャリに乗った南アジア系の青年が3人、4人とグループで走ってくるのに遭遇した。華城市内ではバス停で2人の南アジア系の青年がバスを待っていた。1時間の間に10人もの濃い顔つきの南アジア系労働者を見かけたことになる。
 韓国は南米出身者にも門戸開放
 ペルーから遥々出稼ぎに来た2人組。故郷には恋人が待っている
 7月20日。益山市市街地のコンビニで南米系の青年2人組がアイスコーヒーを飲みながらスマホを見ていた。近くのガソリンスタンドで働いているペルー出身者だった。インカ帝国の都であったクスコの近くが故郷。1人は恋人からメールの返信が来たと嬉しそうだった。ペルーは経済破綻して治安も悪化して海外で稼ぐしか方法がないという。既に韓国で2年働いているが、契約を延長して5年間働いてお金を貯めてから帰国する計画だ。近くのアパートで共同生活しており毎日順番に夕食を作る。
 なぜ日本ではなく韓国を選択したのか? と、聞くと日本での就労は日系ペルー人以外には条件が厳しいので最初から対象外だったとのこと。なるほど日本政府はブラジル、ペルー国籍でも祖先が日本人であることを条件に就労を許可しているが、日系人以外は実質シャットアウトしているらしい。
 木浦港のインドネシア人漁船員
 避難してきた漁船。木浦港は天然の良港であり日本統治時代に国際貿易港として発展。日本人町には商家が並び劇場、料亭、銭湯、そして遊郭まであった
 8月8日。台風襲来で避難してきた漁船で木浦港は満員御礼状態。町には上陸した漁船員が溢れていた。コンビニにアジア系漁船員がひっきりなしに飲み物やお菓子などを買いに来る。店内のイートインや屋外のテント下のテーブルで陽気におしゃべりしている。
 彼らの大半がジャワ島出身のインドネシア人だった。5年契約で漁船に乗り組んでいる。木浦または全羅南道の役所がインドネシアの政府機関と直接漁船員を斡旋しているらしい。
 翌日木浦港を散歩していると昼時に漁船の甲板で韓国人とインドネシア人が車座になって食事をしていた。魚の煮つけ、焼き肉、野菜料理などが韓国風に大皿に盛ってある。大盛りご飯を片手に大皿に箸を伸ばしている。和気藹々、海の男の豪快な食事風景だ。
夕暮れの田舎道を三々五々と歩く外国人労働者
 8月11日。木浦と珍島の中間あたりのヘナン郡の農村の東屋にテントを設営した。東屋の横の砂利道は意外に人通りが多い。しかもほとんどが外国人だ。数百メートル先にスーパーマーケットがあるので買い物の行き帰りのようだ。
 テント設営中の30分ほどの間にバングラデッシュ、インド、キルギスタンなどなど30人以上が通りかかった。港湾の拡張、高速道路延伸などの工事現場が付近にあるのでそこの建設労働者のようだ。
 済州島名産黄金ヒラメの養殖産業を支えるスリランカ
 済州島の黄金ヒラメ養殖場で5年間働いているスリランカ青年。韓国で稼いだ資金で故郷に邸宅とホテルを建てるのが目標
 済州島の海岸線を走ると独特の景観に驚く。海岸線に沿って巨大な建屋が並んでいるのだ。黒っぽい布地で覆われたコンクリートの巨大な生け簀にポンプで地下から汲み上げた海水を注いでいる。生け簀から排出された海水がごうごうと海に放出される。済州島水産業を牽引する黄金ヒラメの養殖場である。
 8月16日。朝天チョテンの海辺の養殖場(fish firm)で3人のスリランカ青年が専用トラックに桶に入ったヒラメを積み込む作業をしていた。炎天下の重労働だ。
 8月18日。南元ナムウォンの海辺の夕刻。1人の青年が散歩していた。彼はスリランカから済州島に来て2カ月。養殖場で3年契約して働いている。養殖場には5人のスリランカ人が働いており宿舎で共同生活。スリランカと韓国の間の政府間協定に基づいた契約なので安心して働けるという。
 夕暮れ時に30歳前後のスリランカ人が通りかかった。彼は養殖場で既に5年働いているが経験を買われ好待遇なのでさらに契約を延長したという。日本に出稼ぎに行っている友人と比較すると韓国は日本より賃金水準が高く契約が延長できるのが魅力と説明してくれた。
 韓国の外国人労働者の賃金水準
 済州島では海女漁も盛んであり観光資源にもなっている。世界遺産に登録申請中とのこと。早朝にトラックで漁場に向かう。
 韓国で外国人労働者からしばしば耳にしたのが、“日本よりも賃金が高い”という比較である。2019年の両国の統計を比較した報告書によると、日本の技能実習生の55%が月収15~20万円であるのに対して、韓国の非専門就業者(いわゆる単純労働者)の62%は月収19~28万5000円(200万~300万ウォン)である。
 しかも、2019年と2023年の為替を比較すると日本円は韓国ウォンに対して13%下落している。2023年の為替レートで計算すると2019年の韓国の非専門就業者の62%は月収21万5000円~32万2000円となる。日韓の賃金格差はかなり大きいようだ。
 知日派知識人が分析する韓国の外国人労働者事情
 7月27日南原市。ソウルからUターンして故郷南原市に戻った日本留学経験のある知日派知識人K氏と知り合った。同氏に韓国における外国人労働者事情について聞いてみた。
 K氏は韓国も日本同様に単一民族国家であり本来外国人に対しては閉鎖的社会であると指摘。しかし外国人労働者なしでは国家・社会が維持できないという共通認識が政府・国民に広く浸透しているという。
 【参考までに統計数字は以下のとおり】
 2019年11月時点で韓国の在留外国人は243万人、韓国の総人口(5180万人)の4.7%。2019年5月の外国人労働者数は86万人、全就業者数の3.2%。他方で日本の在留外国人は2019年6月時点で302万人、総人口の2.4%外国人労働者数は2019年10月時点で166万人。全就業者数の2.6%である。つまり韓国のほうが人口規模対比で日本よりも多くの外国人を受け入れている。  K氏によると韓国で特徴的なのは中国や旧ソ連圏に在住する朝鮮系外国人を積極的かつ優遇して受け入れているという。韓国における外国人労働者の国別統計では朝鮮系中国人が41%、朝鮮系ウズベキスタン人が4%となっている。特に中国東北地方(旧満州)の朝鮮系中国人(中国では朝鮮族と区分)はハングルを話せるので重宝されているという。彼らには就労ビザ、永住権取得、帰化申請などで優遇措置があるという。
 7月9日。冷たい水をもらいに華城市内の食堂に入ったら中央アジア的容貌の若いウズベキスタン出身の女性がいたことを思い出した。彼女は単身韓国に出稼ぎに来た、父親が朝鮮族で母親がウズベキスタン人のハーフだった。ロシア語は多少話せるけど英語はダメとのこと。ハングルが話せず苦労していると苦笑していた。
 政府・公的機関が直接関与する雇用許可制度と雇用契約
 K氏によると現在の韓国の外国人労働者受入制度はベトナムカンボジア、フィリピンなど十数カ国と2国間政府協定を結んで公的機関が直接関与しているという。事業者側からの求人情報を自治体がまとめて関係国の公的機関とマッチングする。1990年代は日本の技能実習制度に倣った私的ブローカーが介在する制度であったが職場からの失踪、給与未払いや人権侵害などの問題が頻発して現在のような制度に変革したという。(注)2004年から現行制度を導入
 アフリカ諸国とはKOICA(韓国国際協力団)が窓口となって労働者を受け入れている。そして外国人労働者を保護するための独立した救済機関も設置されているという。受入れプロセスの透明性、人権擁護の制度化など外国人労働者を取り巻く環境を抜本的に改善したことで国際的に高い評価を得ているとK氏は自慢げに語った。(注)ILO、国連、世界銀行などから表彰されている。
 韓国では外国人労働者に永住権の取得、帰化の道も開けている
 K氏は韓国では日本同様に労働力を確保するための移民の受入れ、つまり“移民政策”については政府・国民ともに否定的であるという。他方で外国人労働者が韓国で一定期間就労して本人が希望すれば永住申請できるという。現行の雇用許可制度の下でも最長10年近く韓国で就労可能であるが、おおよそ5年就労すれば永住権を申請できるという。さらに韓国では法律で二重国籍を認めているので、母国の国籍を保持したまま帰化申請できるので外国人にとり帰化への心理的ハードルは低いだろうと推測した。
 どうするニッポン? 外国人労働者に見限られるのか
 日本では特定技能制度という新制度への移行をめざしているが悪質なブローカーや監理団体の介在など根本的な問題を抱えたままでプロセスの透明性や人権擁護が確保できるのか甚だ疑問が残る。韓国はどのようにして“しがらみ”を断ち切り、現行制度導入に踏み切れたのか。
 今こそ謙虚に韓国から学んで抜本的な改革を断行しない限り数年後には日本の労働市場は途上国の若者から見向きもされなくなると危惧する。
 以上 第10回に続く
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