☵32〕─5─中国は日本と韓国の輸出規制報復合戦で漁夫の利を得る。~No.261No.262No.263No.264 

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   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・   
 2019年7月16日 msnニュース KYODO 共同通信社「韓国、中国からフッ化水素調達か 日本の規制強化対象
 【北京共同】中国紙、上海証券報の電子版は16日、中国の化学企業、浜化集団(山東省)が韓国の半導体メーカーからフッ化水素を受注したと報じた。日本がフッ化水素の対韓輸出規制を強化したため、韓国企業が代わりの調達先として中国を選んだ可能性がある。
 報道は日本の措置との関連を指摘した上で、浜化集団が製品検査などを経て韓国企業と正式な協力関係を結んだとしている。」
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 7月16日23:11 産経新聞「韓国与野党反日で結束 文氏、18日に5党代表と会合
 与野党反日で結束させる意図がうかがえる韓国の文在寅大統領(ロイター)
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 【ソウル=桜井紀雄】韓国の文在寅ムン・ジェイン)大統領は、日本政府による輸出管理強化について、韓国経済の牽引役である半導体産業を狙って「経済成長」を妨げる措置を取ったと強く批判した。経済・外交分野で失政を重ねていると非難されてきた文政権が、今回の苦境は日本に一方的に責任があるといわばスケープゴートとし、世論の収斂(しゅうれん)を図ろうとする意図がうかがえる。
 「韓日関係で、歴史問題はポケットの中の錐(きり)のようなものだ。時々われわれを刺して傷つける」
 大統領府での15日の会議で、文氏はこう切り出した。
 文氏自身は、歴史問題を「知恵を集めて解決していきながら両国関係の未来志向的発展のために協力していくべきだ」と強調してきたのに、日本が「いかなる外交的な協議や努力なし」に歴史問題と経済問題を結び付けた「一方的な措置を取った」と糾弾した。
 そもそも今回の問題は、昨年10月にいわゆる徴用工訴訟で日韓が両国関係の基盤としてきた1965年の請求権協定の趣旨を覆し、日本企業に賠償を命じる判決を最高裁が下したにもかかわらず、文氏が「司法に介入できない」の一点張りで半ば状況を放置してきたことに端を発している。韓国紙、朝鮮日報は15日付社説で「政府が『三権分立』を理由に8カ月間、手をこまねいていたことで問題が拡大した」と指摘した。
 文氏の発言は、徴用工問題を「歴史問題ではなく、国際法上の国と国の約束を守るのかということだ」(安倍晋三首相)と文政権に抜本的解決策の提示を迫る日本側との認識の隔絶を如実に示した。
 文氏は、日本が韓国経済の中核である半導体材料から手をつけたことに「注目せざるを得ない」と述べ、日本の意図が韓国の経済成長阻害にあるなら「決して成功しない」とも主張した。「過去、幾度も全国民が団結した力で経済危機を克服したように、今度も困難に打ち勝つ」と国民に団結を呼び掛けた。
 最大野党、自由韓国党を含む与野党は16日、文氏と5党代表が日本の措置について話し合う会合を18日に開くことで合意した。自由韓国党はこれまで文氏の経済・外交政策を厳しく批判し、国会審議の拒否も繰り返してきたが、今回の問題では協力する立場を示している。日本の措置は皮肉にも、対立が激化した韓国の政界に“共通の経済の敵”を提供したことになる。」
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 7月17日07:03 msnニュース 47NEWS 全国新聞ネット「日韓関係は「戦後最悪」に 収拾困難、歴史的転換点か
 © 全国新聞ネット 半導体材料の輸出規制強化に関する事務レベル会合に臨む韓国側(右)と経産省の担当者=12日午後、経産省(代表撮影)
 日本政府による韓国向け半導体素材3品目の輸出管理強化により、日韓関係が「戦後最悪」の状況となっている。今月12日に経済産業省で行われた実務者会合は全くの平行線だった。8月中には、輸出を包括的に優遇する「ホワイト国」から韓国を除外する方向だ。安倍政権がどこかの段階で事態を収拾しようとするなら、想定される決着時期は年内だろう。しかし、韓国が徹底抗戦し、日本も一歩も譲らなければ、日韓関係の在り方は根底から覆り得る。双方の首脳は、そこまでの覚悟をもってこの事態に臨んでいるのだろうか。過去、多くの歴史的転換点がそうだったように、大局的な構想もないまま、戻ることのできない一線を既に越えてしまったのかもしれない。(共同通信=内田恭司)
 ▽もはや「同盟国」でない
 日本政府が、対韓輸出の管理強化に踏み切ったのは7月4日だ。半導体やディスプレイの製造に必要な高純度のフッ化水素、フッ化ポリイミド、レジストという3品目の輸出について、「包括」許可から「個別」許可に切り替えたのだ。8月中には韓国をホワイト国から外す方針なので、輸出管理が強化される品目は拡大することになる。もはや韓国は経済分野での「同盟国」ではないと突き放すに等しい措置だ。
 日本側は、韓国の輸出管理体制の脆弱さや、韓国向け輸出で「不適切な事案」が起きたことを理由としている。だが、いわゆる「元徴用工」判決について、再三にわたり韓国政府に日韓請求権協定に基づく対応を求めてきたものの「事実上無視された」(外務省幹部)ことへの報復であるのは間違いない。
 日本による韓国への「報復」措置は、これが最初ではない。厚生労働省は、今回の対応よりも1か月余り前の5月30日、韓国産ヒラメや貝類などの輸入検査を強化すると発表した。食中毒が続いたためとしているが、韓国が福島県産の農水産物などを禁輸していることへの対抗措置と受け止めるのが自然だろう。
 「韓国産ヒラメは済州島の養殖ものが多いが、今回監視対象にされた海産物について、日本政府は韓国の原発近くで取れたものが混ざっていると疑っているのでは。残留放射性物質のデータを集め、韓国に突き付けるつもりなのかもしれない」。韓国政府関係者はこうした懸念を抱きながら、安倍政権がいよいよ本格的な対韓「制裁」に踏み出してくるのではないかと情報を集めていた。そして実行されたのが、今回の輸出管理の強化だった。
 ▽待ち受ける情報協定期限
 だが、日本政府の措置は貿易分野にとどまらない可能性がある。今回の「半導体制裁」の理由に、日本は「安全保障上の懸念」を挙げた。重要な戦略物資が北朝鮮などに横流しされ、兵器の製造に使われた疑いがあると示唆しているのだ。
 思い出すのは昨年12月のレーダー照射事件だ。韓国海駆逐艦日本海海上自衛隊の哨戒機に対して射撃管制用レーダーを照射したとされるこの事件は、日本側に強い衝撃を与えた。韓国軍艦の行為は敵対国への扱いに等しく、交戦という不測の事態を招く恐れすらあったからだ。
 防衛分野に精通する自民党議員によると、日本政府内では「もはや韓国軍には共通の行動規準が通じない。もう友好国としてではなく、中国やロシアと同列に扱う必要があるのではないか」といった議論が出ているという。
 8月24日には、1年ごとに更新が必要な日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の申告期限を迎える。破棄する場合は相手国に事前通知する必要があるのだ。北朝鮮の非核化を巡り、日米韓3カ国の防衛当局間の連携が不可欠な中、協定は維持されるとみられるが、日本が延長を求めなければ、安保分野でも韓国を友好国から外したことを意味する。
 ▽韓国は屈しない
 いったい安倍晋三首相は、「戦後最大の危機」(外務省幹部)に直面する日韓関係をどうするつもりなのか。官邸から伝わってくるのは、文在寅政権への「強い不満」(同)だ。政府関係者によると「慰安婦問題で裏切られ、元徴用工訴訟でも煮え湯を飲まされ続けた安倍首相の怒りは相当なもので、韓国に対して完全に切れた状態だ。政権が続く限り、強硬姿勢は変わらないだろう」という。
 それでも関係修復を図るなら、試金石は先ほどのGSOMIA延長だ。双方が継続の意思を示せば決定的な危機は回避され、次のステップとして首脳会談を模索することになる。9月以降、国連総会や東南アジア諸国連合ASEAN)関連首脳会合とあるが、最も会談実現の可能性があるのは、12月までの開催が見込まれる日中韓サミットだ。今年の議長国は中国で、日程が固まれば安倍首相と文在寅大統領は出席する。
 先端製品の製造に不可欠な素材の供給が滞り、韓国経済の屋台骨であるサムスングループの経営に影響が出れば、韓国は深刻な打撃を受けるため、遠からず音を上げ、大幅な譲歩をせざるを得ない―。首脳会談実現までに描く日本側のシナリオはこのようなものだろう。首脳会談の開催は、あくまでも「日本の勝利」が前提というわけだ。
 だが、韓国はいまや「世界10位圏の経済強国」で、グローバルな供給網の一翼を担う世界企業のサムスンは巨大だ。素材の調達能力も高い。最恵国待遇をやめる程度の措置なら、十分に持ちこたえるとの見方は少なくない。これまでの半導体の供給過剰と市況の崩れが調整されるとの期待からか、サムスンの株価は上昇している。
 「積弊の清算」を存立理由とする、誇り高い文大統領が一方的に屈服する展開も考えにくい。すると、日本側も突っ張り続けるのなら、首脳会談を開いたところで意味のある合意は得られず、日韓関係はいよいよ修復不能になっていくのではないか。
© 全国新聞ネット 5日、日本の輸出規制強化に反対し、ソウルで日本企業のロゴマークが描かれた箱を踏みつぶす韓国の中小企業経営者ら(共同)
 ▽「普通の関係」に
 ただ、安倍首相が日韓関係の行方について、そこまで達観しているのなら、今回の事態の意味合いは変わる。現時点では読み解く材料に乏しいため、筆者の私見の域を出ないのだが、日韓両国はもう「単なる隣国」の関係になるしかないということだ。歴史的な経緯や地理的な近さから日韓は「特別な関係」にあったが、これからは普通の関係になる。
 そう見据えれば、韓国への特例的な措置は淡々と廃止していくだけだ。この先、進歩勢力が韓国を席巻し、南北は融和していく流れであれば、日本は眼前に現れるであろう「朝鮮半島勢力」と、新たな関係を構築する必要性すら出てくるのかもしれない。
 一方で、日本がGSOMIAを延長しない決断をするなら、事態の見え方はまた変わってくる。文大統領が政権を担う韓国との友好関係は断ち切るということだ。文政権は国際法を守らない「不埒(ふらち)な政権」であり「従北勢力」でもある。北朝鮮の完全非核化を進めるためにも、文政権は徹底的に追い詰める必要があるとの判断だ。
 それにより日韓関係を正常軌道に戻し、かつての日米韓3カ国連携を再構築する。トランプ米政権の全面的なバックアップも受ける。とはいえ、政権打倒をもにらむ手法は強権的で、国内世論や国際社会からの批判は免れないだろう。
 安倍政権はどこまで見通しているのだろうか。これからの展開によっては、今回の対韓輸出の管理強化は、まさに歴史の転換点だったと記憶されることになる。」
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 7月17日07:40 msnニュース 東洋経済オンライン「「日韓関係崩壊」で笑うのは中国だという皮肉 アメリカの無関心さが最悪な事態を招いた
 ダニエル・スナイダー
© 東洋経済オンライン 日本政府が韓国に対する輸出規制に踏み切ったことで、深刻化する日韓の関係悪化。遅ればせながらアメリカでも懸念の声が上がっている(写真:ロイター)
 日本と韓国の政府高官が7月上旬、首都・ワシントンをそれぞれ訪れ、アメリカ政府高官らに対し自国の立場を訴えた。日韓両国が全面的な経済戦争に突入する瀬戸際まで来ているからだ。だが、双方ともアメリカ側に仲裁する意思が明らかにないため、失意のうちにワシントンを後にした。韓国と日本に駐在する、アメリカの上級外交官たちの姿勢と変わらない反応しか得られなかったからだ。
 「仲裁する気も関与する予定もない。北東アジア地域における主要な問題、とくに北朝鮮に関して双方が再び協力するようひたすら求めるだけだ」と、アメリ国務省の東アジア・太平洋担当デビッド・スティルウェル次官補はNHKの取材に対して述べた。
ようやくアメリカが動き出す
 しかし7月15日になると、アメリカ政府の態度は一変した。「複数の政府高官によると、現在この件に『関与』すべくチームを発足させる動きがあるらしい。なぜなら日韓関係の悪化がアメリカの戦略的利益をむしばみつつあるからだ」と、かつてジョージ・W・ブッシュ政権時に国家安全保障会議アジア上級部長を務めたマイケル・グリーン氏は明かす。
 政府高官らは、グリーン氏のようなアジア通だけでなく、バラク・オバマ政権で国家安全保障会議アジア上級部長を務めたエヴァン・メデイロス氏などの元政府高官たちと密接に協議を重ねているという。
 ドナルド・トランプ政権に近い関係者によれば、アジアの国家安全保障会議上級部長のマシュー・ポッティンガー氏は、今週末までに日本と韓国に向かい、深刻化する日韓関係の改善を試みようとしている。日本が韓国に課した輸出規制、そして、韓国の文在寅大統領が7月15日に発表した強硬声明は、韓国の実業家と社会に対し、日本との長期的な経済紛争に備え、日本のサプライヤーへの依存を終わらせる必要があると呼びかけたが、こうした動きにアメリカの政府関係者は深い懸念を示している。
 「アメリカ側は、日韓関係が急激に悪化していることについて少々驚いている」と、この関係者は話す。「トランプ政権の見解は、これはすべて文大統領に責任があるが、これに対して日本が予想だにしなかったダイナミクスを作り出してしまった」。
 ポッティンガー氏をアジアに派遣するという決断は、舞台裏で起こっている唯一の取り組みではない。日韓の良好な関係を積極的に求めてきた韓国の高官によると、日韓トップのコミュニケーションチャネルを築くために、民間企業も尽力している。元アメリカ政府高官もこうした努力を支援しようとしているが、現時点では安倍晋三首相と文大統領がこれに応じることはないことも理解している。
 目下、両首脳が重視しているのは国内政治である。21日に参議院選を控えている安倍首相はもとより、北朝鮮との外交失敗に対する批判が持ち上がっている文首相もナショナリズムを盾に支持率を回復したいと考えている。
「日本政府のレッドラインを越えた」
 一方、アメリカの外交政策エリートからは、トランプ政権に対しても、日韓関係が悪化していることを深刻に受け止めず、両国が外交による問題解決を二国間で図ることが明らかにできなくなった時点でも積極的に介入しなかったことについて批判が高まっている。
 「アジアで危機が広がっていることに対して、関心を持っている人がほとんどいない」と、メデイロス氏は15日付のワシントンポスト紙に書いている。「とりわけ、この危機を唯一解決できるであろうアメリカ政府がそうであってはならない」。
 アメリカの政府高官らは、日本政府が韓国に対する輸出規制に踏み出した背景には、2015年の慰安婦合意の破棄、韓国の最高裁が日本企業に下した戦時中の韓国の徴用工に対する賠償支払い命令などの、韓国の一連の動きがあることは十分理解している。その後、日本企業の資産を差し押さえる命令を出したことや、関係を正常化するために1965年の協定に基づき調停を行うことを韓国側が拒否したことで、「日本政府のレッドラインを越えた」と、メデイロス氏は論じている。
 だが、政府高官らは同時に、今回の輸出規制が韓国側に不適切な事案があったから、という日本の公式説明には納得していないどころか、過去の韓国の動きに対する報復であると見ている。いずれにせよ、責任問題はアメリカにとって重要ではない。拡大する報復の連鎖は明らかに制御不能になっており、そのことがもたらす結果こそが重要なのである。
 「この紛争の地政学的・経済的コストは相当に高いうえ、上がっている」とメデイロス氏は書いている。「日韓どちらも自らの議論について技術的なメリットを有しているかもしれないが、それぞれの国のより大きな外交および経済的利益、ならびにアメリカの利益を近視眼的に損なっている」。
 アメリカの政府関係者は、2つの主要な安全保障同盟国間による衝突で得するのは中国と北朝鮮であり、両国は日米間における安全保障の協力関係の崩壊を見て喜んでいるのではないか、と懸念している。
 「驚くべきことではないが、アメリカが調停役としての役割を果たしていないのは、ほとんど犯罪だ」と元政府高官は語る。「サプライチェーンに影響が及ぶことはすなわち、アメリカの利益にも関わってくる。これはトランプ大統領が掲げる『アメリカ・ファースト』の直接的な結果でもある。この危惧すべき状況で勝ち組となるのは中国くらいだ」
日本の「公式説明」誰も信じていない
 今回、日本政府は、半導体やディスプレーの材料となる感光材など3品目の輸出業者に対して、韓国への輸出には個別に許可申請の提出を求めるという措置は、自由貿易への制限ではなく、国際法にも矛盾していないと主張している。日本側は韓国企業が事実上、こうした化学物質の利用を管理できていない可能性がある事例を引き合いに出している。
 こうした主張は、アメリカでは相当懐疑的に見られている。この危機を引き起こした責任が文政権にあると認識する人々ですらそうだ。日本側は、これは報復措置ではなく、徴用工問題に直接関連していないと主張してきた。しかし、日本の外務省職員からアメリカの記者へ送信された輸出規制を警告するメールには徴用工論争に関するファクトシートも含まれており、これらの問題がつながっていないとする日本側の主張は信頼性を欠く。
 ニューヨーク・タイムズ紙は15日、日本の輸出規制とトランプ大統領による鋼鉄やアルミニウムなどへの安全保障を理由として課された関税を比較した長い記事を掲載した。同記事は、輸出規制について韓国は日本の貿易の“政治化”による被害者であるとする文政権の主張を踏襲している。
 日本側はこうした報道を不服に思っており、日本の行動が批判にさらされつつあることを意識している。しかし、「政策は政治家が主導するのであり、外務省や経済産業省の官僚ではない」と、安倍首相の国家安全保障会議と協力関係にある日本のある専門家は述べている。実際、官僚間では今回の規制を間違っていたと見る向きも少なからずあるようだ。
 同様に、文大統領は韓国の企業や政治家に対して、日本に対する国家主義的なレトリックに協力するよう圧力をかけているが、韓国内には、これも悲惨な間違いだと考える声が多くある。「日韓関係の下降スパイラルが続くことも懸念している」と、日本で密接な関係を維持している元韓国高官は自信を持って語った。「できるだけ早く最高レベルの外交努力が必要だ。しかし、現時点では双方がそうする準備ができていないように感じる」。
一般国民はまだ日本とのいい関係望んでいる
 元韓国高官は、慰安婦合意を廃止し、日本の企業資産を押収する文政権の動きに反対した。それにもかかわらず、日本が経済的報復を行うことは、日本が主導するリベラルな国際システムを弱体化させかねない、とこの高官は懸念する。
 「もちろん、韓国でも国際社会でも日本のいいイメージが損なわれるだろう」と、この高官は語る。「韓国はまだ、日本との貿易戦争を始める準備が整っていない。一般の国民は日本とのいい関係を望んでいる。しかし、日本の行動が韓国にとって経済的な苦難につながれば、たとえ韓国が再び保守政権になったとしても、両国関係の立て直しは難しくなるだろう」。
 こうした中、気になるのがアメリカ政府の動きだが、「アメリカ政府が真剣にかかわることはないだろう」と、かつて日本の外務省で高官を務めた人物は話す。「真剣に取り組んでいたとしても、成果は得られないのではないか」。
 それでも、アメリカの韓国政府への影響力は依然大きい。文大統領は、トランプ大統領北朝鮮外交を何としても成功させたいと思っている。そして安倍首相は、参院選が終わり、アメリカとの貿易交渉が新たに始まれば、トランプ政権に逆らうことはないかもしれない。少なくとも事態の悪化を阻止し、外交のための時間稼ぎをする機会は残されている。しかしそれも、権限を持った外交官がアメリカにまだいればの話だが。」
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 7月17月18:02 産経新聞「文政権が韓国紙日本語版を「売国的」と批判 事実上言論統制
 会議で発言する文在寅大統領=15日、ソウルの大統領府(韓国大統領府提供・共同)
 【ソウル=桜井紀雄】韓国大統領府の高●(=日へんに文)廷(コミンジョン)報道官は17日の記者会見で、日本政府による輸出管理強化について報じた記事の見出しを挙げて保守系大手紙の朝鮮日報中央日報を名指しで批判した。特に日本語版サイトの記事で見出しを変えているケースがあると指摘し、「韓国企業が困難に直面する中、何が韓国と韓国民のためなのか答えるべきだ」と疑問を呈した。
 大統領府で司法分野を管轄する●(=恵の心を日に)国(チョグク)民情首席秘書官も16日、フェイスブックで両紙日本語版の見出しを挙げ、「日本で嫌韓感情の高まりをあおるこんな『売国的』タイトルを選んだ人間は誰か?」と批判した。
 別の高官は「国益の視点でみるよう望む」と強調。国難の中、メディアも日本への刺激的な記事の拡散を控えるべきだと半ば言論統制を敷いた形で、メディア側の反発は避けられない。
 高氏が問題視した記事の1つは4日付朝鮮日報「韓国はどの面下げて日本からの投資を期待してるの?」という見出しの日本語版記事。韓国語版では「日本の韓国投資1年間でマイナス40%…」を主見出しにしていた。高氏は、17日付中央日報の「韓国は日本をあまりにも知らなすぎる」とのコラムや朝鮮日報の別の記事が日本のポータルサイトで2、3位に上っているとし、日本人がこうした記事を通じて「韓国世論を理解している」と指摘した。
 ただ、同コラムは、元東京特派員が専門家らの意見に基づき、文政権は「事前の警戒と予防に失敗した」と分析。日本が求める仲裁委員会の必要性にも言及した記事だ。いたって冷静に状況を解説したもので、少なくとも嫌韓感情をあおる論旨では決してない。
 一方、韓国紙日本語版が刺激的な見出しでアクセス数を稼いでいるとの声は日韓双方で以前からあった。」
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 2018年11月29日 産経WEST「漂流する日韓関係 「ニッポン軽視」文在寅が抱えた政治リスク
 木村幹(神戸大学大学院国際協力研究科教授)
 韓国最高裁による徴用工判決や、慰安婦問題における「和解・癒やし財団」の解散など、相次いで韓国から報じられる動きに日韓関係は大きく揺らいでいるが、その背景には一体何があるのだろうか。
 こうした韓国の動きについて、「文在寅ムン・ジェイン)左派政権が日本への攻勢を強めているのだ」という議論がある。これは、韓国では大統領が裁判所に対しても強い影響力を有しているという理解に基づいており、文在寅政権による組織的な動きの結果だとされている。
 とはいえ、このような見方はいささか単純に過ぎる。例えば、10月30日に出された元徴用工らに対する最高裁の判決は、6年以上も前の2012年5月、同じ最高裁が下級審の判決を差し戻し、再び上告されてきたものである。
 どこの国においても、最高裁が自ら差し戻し、下級審がその最高裁の差し戻し判決の趣旨に従って出し直した判決を、最高裁がもう一度覆すことは考えにくい。事実、今回の判決の趣旨は基本的に2012年の差し戻し判決に沿ったもので、その論旨が新しいわけではない。
 そもそも、この判決に対し、1965年の日韓請求権協定によって個人的請求権が消滅した、とする少数意見を出した2人の判事のうち1人は、文在寅が自らの大統領就任後最初に最高裁判事に任命した人物だ。逆に保守政権であった李明博(イ・ミョンバク)や朴槿恵(パク・クネ)が任命した判事は、1人を除いて、判決を支持している。
 文在寅に近い左派が「反日判決」を支持し、これに対抗する右派がこれに反対する、というほど韓国の状況は単純なものではない。当然、文在寅政権が意図的に「反日政策」を仕掛けているなら、こんな状況になるはずがない。
 重要なことは、徴用工判決から慰安婦関係の財団解散に至るまでの過程は、日本において考えられているほど韓国で注目されているわけではないということだ。
 実際、韓国内の雰囲気は「どうして日本はこの判決でこんなに怒っているのだ」という声が多く聞かれる状況である。これはよく誤解されているが、今日の韓国では日本に対する政策のあり方で、大統領の支持率が上下することはほとんどない。
 今年1月の慰安婦合意にかかわる見直しの発表時も、徴用工裁判の時も、また慰安婦関係の財団解散の際にも、文在寅の支持率はほとんど動いていない。盧武鉉ノ・ムヒョン)政権期や李明博政権期のように、領土問題などの対日政策のあり方で大統領の支持率が大きく上下する状況は、今の韓国には存在しない。
 そしてそのことは、文在寅をはじめとする韓国の今日の政治家にとって、対日強硬政策を取り関係を悪化させることで得られる利益がほとんどないことを意味している。
 文在寅政権の支持率の推移をみれば、徴用工判決のインパクトがほとんどないのに対して、税金引き下げの影響の方がはるかに大きいことが分かる。
 要するに、文在寅政権が一連の事態を意図的に仕掛けているわけではないことは、彼ら自身の対応からも明らかだ。そもそも徴用工判決が出て1カ月近く経つが、文在寅自らこの問題について公の場で一切触れていない。
 これは文在寅政権がこの事態への対処の方向を決めかねていることを示している。とはいえ、それはそれで不思議なことだ。なぜなら、先に述べたような事情から、徴用工裁判においては、いったん判決が出ればその内容が日韓関係に大きな打撃を与えるであろうことは容易に予想できたからである。
 慰安婦関連の財団の解散も同様だ。仮に徴用工判決への対処として何らかの政治的妥協を日本との間で模索するなら、先に締結した慰安婦合意を無にするかのような行動を行うのはマイナスにしかならない。
 加えて11月5日には、韓国外交部はわざわざ「慰安婦合意には法的効力がない」という公式解釈まで示している。先に結んだ国際的合意の法的効力を一方的に否定する相手と、歴史認識にかかわる重要な合意を新たに結ぶことは難しい。これだけ見ると韓国政府はわざわざ日本との妥協の道を閉ざしているようにしか見えない。
 結局、韓国では何が起こっているのか。その答えは彼らには確固たる対日政策がなく、政権内での十分な調整もされていない、ということである。
 北朝鮮との協議に総力を注ぎ、そのためのワシントンの動きに一喜一憂する今の韓国政府にとって、日本はさして重要な存在には映っていない。だからこそ大統領も国務総理も、また外相も、今後の日韓関係をどうするのかについて具体的なアイデアを有していない。
 そして、それは彼らが重視する北朝鮮問題との関連についてすらそうである。韓国政府は現在の北朝鮮を巡る動きにおいて、日本に特段の役割を求めておらず、だからこそ、いかなる具体的な提案をも伝えてこない。
 彼らが日本に当面望んでいるのは、日本が彼らの北朝鮮政策の邪魔をしないことであり、それは日本が何もしてくれなければそれでよいことを意味している。
 韓国側が自衛艦旭日旗の掲揚自粛を求めた問題が勃発した直後、文在寅が年内の訪日を早々に断念して見せたように、今の韓国は日本をさほど重視しておらず、大統領もそのリスクを取ろうとはしない。だからこそ、事態は司法部や行政部の各部署がばらばらに動くことにより、ますます悪化する。
 旭日旗問題にせよ、慰安婦問題にせよ、徴用工問題にせよ、例えば教科書の記述に見られるように、韓国では「国の建前として」、日本に対して批判的な意見が主流である。ゆえに、誰かが日韓関係を考慮して統制しなければ、悪化させる方向へとしか動かない。
 そして、それは「政権が世論を配慮して行っている」というようなものですらない。誰もが何も考えずに状況に流された結果として、次から次へと新しい既成事実が作り上げられ、そのことに後から気づいた韓国政府は事後的な対処に追われることになる。
 しかしながら、そこにグランドデザイン(長期的な計画)はなく、現れる施策は弥縫(びほう)的なものになる。日本の重要性が低下した状況の中、動きは遅く、誰も事態の責任を取ろうとはしない。
 このため、ますます文在寅の訪日は遅れ、日韓関係は悪化していくことになる。仮に事態が政権の統制により動いているなら、政権を動かしさえすれば関係は改善するだろう。しかし、問題は事態を誰も統制しておらず、統制するための真剣な努力もなされていないことである。しばらくは韓国の対日政策は漂流を続けることになりそうである。(敬称略)
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