🗾38〕─1─約8,000年の新石器革命。男性の社会的競争の激化が原因で生殖できた男性は極度に少なかった。〜No.161No.162No.163  

    ・   ・   ・   
 関連ブログを6つ立ち上げる。プロフィールに情報。
   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・  
 GigaziNE
 2018年06月14日 07時30分サイエンス
 大昔に世界中の男性が大量死していた理由が遺伝子の研究で明らかにされる
 約5000年前~約7000年前の間にアジア、ヨーロッパ、アフリカに住む男性の大半が死亡している時代があり、17人の女性に対し、1人の男性しかいなかったことがわかっています。「なぜ、このような状況に陥ってしまったのか?」という疑問に多くの研究者を悩ませることになりましたが、スタンフォード大学で遺伝学の教授を務めるマルクス・フェルドマン氏らの研究で理由が明らかにされました。
 Cultural hitchhiking and competition between patrilineal kin groups explain the post-Neolithic Y-chromosome bottleneck | Nature Communications
https://www.nature.com/articles/s41467-018-04375-6
 Why Do Genes Suggest Most Men Died Off 7,000 Years Ago?
 https://www.livescience.com/62754-warring-clans-caused-population-bottleneck.html
 この男性が非常に少ない「Y染色体ボトルネック」が発生していたという事実は、2015年にエストニアのタルトゥ大学の研究で示されて以来、多くの研究者がその理由を調査していました。
 この現象が「Y染色体ボトルネック」と表現される理由は、男性が持つY染色体の特徴から来ています。人間の体細胞には23対の染色体があり、23番目の対の組み合わせで性別が決まります。女性であれば2つのX染色体を有し、また、X染色体とY染色体を1つずつ持っていれば男性になることがわかっています。また、子どもは両親から染色体を1つずつ継承しますが、Y染色体に関しては男性からのみ受け取ることになり、突然変異することがなければ、祖父から父、父から息子とY染色体が受け継がれても、Y染色体が変化することはほとんどありません。このため、男性が大量死すると、死んだ男性の分のY染色体がなくなることから、この現象が「Y染色体ボトルネック」と呼ばれています。
 タルトゥ大学の研究では「Y染色体ボトルネック」が起きた理由として2つの仮説が挙げられており、1つは「生態学的な要因や気候的な要因によるもの」、もう1つは「当時の男性は社会的に権力があり、子どもを大量に作りすぎたために大量死が起きたのではないか」というものでした。
 しかし、フェルドマン氏は、1:17の男女比はあまりにも極端すぎるため、これら2つの仮説では説明できないと指摘。そこで、研究チームは当時の集団内で起きていた状況を調べるために「Y染色体の突然変異」や「異なる種族間の戦争」「自然死」などの18通りの仮説を立て、それぞれの仮説でシミュレーションを行いました。
 これらのシミュレーションを通して、最も有力な仮説となったのが、「集団間で戦争が行われており、負けた集団の男性が皆殺しにされた」という説です。片側の集団の男性が全員殺されることになれば、殺された人数分のY染色体が失われることにつながり「Y染色体ボトルネック」の理由としても成立します。
 また、当時の女性には、同様のボトルネックが発生していなかったことがミトコンドリアDNAの分析から明らかになっています。この事実について、フェルドマン氏は過去に植民地化された地域の歴史になぞると説明がつくとしており、「集団内の男性は全員殺されるが、女性は勝利した集団に移動することで生き延びられる傾向にあります」と述べています。
 イギリスのサンガー研究所の進化遺伝学者であるクリス・タイラー・スミス氏は「Y染色体ボトルネックについて、タルトゥ大学の研究では合理的な答えにたどり着くことができませんでしたが、スタンフォード大学の研究で示したボトルネックが戦争によるものであるという仮説は合理的なものになっています」としており、フェルドマン氏らの研究チームが示した仮説が有力であると考えています。
 フェルドマン氏は「Y染色体ボトルネックがあった時代以降は、人類が都市のような大きな社会を形成するようになったことで同様の争いが減り、Y染色体の多様性が復活しています」と述べています。
   ・   ・   ・   
 WIRE
 新石器時代に生殖できた男性は「極度に少なかった」
 約8,000年前の新石器時代、生殖を行った女性17人に自分のDNAを伝えることができた男性は1人だけだった。これは、新石器革命による男性の社会的競争の激化が原因である可能性が高いという研究結果が発表された。
 新石器時代に生殖できた男性は「極度に少なかった」
 PHOTOGRAPHS BY WIKIMEDIA COMMONS
 穀物を製粉するための、新石器革命時代の石器(イベリア半島)。
 多くの分析が、約5~10万年前の非アフリカ系人口に「ボトルネック効果」が生じたことを明らかにしている。これは、現生人類の第一波がアフリカを出た(日本語版記事)と推定される時期にぴったり一致する。つまり、人類が初めてアフリカを離れたときに、「出アフリカ」を果たした人類が少数だったため、人類が持つ全遺伝的多様性のうちのごく一部がヨーロッパとオセアニアの新しいコロニーに持ち込まれ、遺伝的ボトルネックが形成されたのだ(さらに、約75,000年前に人類の規模が急減して総数10,000人以下となった形跡があり、この原因を、インドネシアスマトラ島トバ火山の大噴火による寒冷期(火山の冬)に求める「トバ・カタストロフ理論(日本語版記事)」もある)。
 しかし、これまでに明らかになっていなかったボトルネック効果がある。それは、約8,000年前に「男系の遺伝的多様性」に生じたものだ。エストニアのタルトゥ大学などによる研究グループが2015年3月13日付けで学術誌『Genome Research』オンライン版に発表した論文は、この時期に生殖を行った女性17人に対して、自身のDNAを伝えることができた男性はたったの1人だったことを示している。
 この分析は、アフリカとヨーロッパ、シベリア、オセアニアアンデス山脈、アジア各地からの456人のデータに基づいて行われた。研究グループは、男系に伝えられる「Y染色体」を分析した。Y染色体の分析結果を使うと、歴史的な男性人口に関する情報を集めることができる。その後、彼らはこの分析結果を「ミトコンドリアDNA」の分析結果と比較した。ミトコンドリアDNAはすべての母親からすべての子どもへと伝えられる遺伝物質で、歴史的な女性人口に関する情報の再構築に用いられる。
 この比較により、研究グループは、自身の遺伝物質を次世代に伝えた男性と女性の数を明確にすることができた。彼らが発見したのは、約8,000年前に起きた男性の生殖の予期せぬ激減だった。この時期、人類の個体数は増加傾向にあったが、前述したように、生殖できた男性は極度に少なかったことがわかったのだ。
 このボトルネックは、生殖年齢まで生存する男性の数が減ったためだろうか? それとも、何らかの理由で、生殖を行う男性の数が減ったためだろうか? 文化的な慣習によって、どちらか一方の性別の子どもを好む傾向を生むことはしばしばある。その結果、人口動態の急変が生じる場合もある。しかし、もしそうだとしたら、このボトルネックは特定の人口集団のみに限られるはずだが、実際にはそうではない。先述したように、アフリカとヨーロッパ、シベリア、オセアニアアンデス山脈、アジア各地という多様な地域において、このボトルネックは生じているからだ。
 研究チームによると、このボトルネックは「新石器革命」と時期が一致している。新石器革命では、農業や牧畜の開始、コミュニティーの形成、輸送技術の発達など、急激な技術革新が起きた時代だ(農耕が始まった時期については諸説あるが、紀元前10,000年から紀元前8,000年頃にシュメールで始まり、これとは独立して紀元前9,500年から紀元前7,000年頃にインドやペルーでも始まったとされる。その後、紀元前6,000年頃にエジプト、紀元前5,000年頃に中国、紀元前2,700年頃にメソアメリカでも開始されたと考えられている)。
 WATCH
 なぜ深センだけが“シリコンヴァレー”になれたのか? | FUTURE CITIES | Ep1
 Most Popular
 「スーパームーン」「スーパーブルームーン」とは? 貴重な満月について知っておくべきこと
 BY WIRED STAFF
 日本人が発見した「西村彗星」が太陽に最接近、観測の好機がやってくる
 BY WIRED STAFF
 スウォッチがMoonSwatchの限定モデルを「スーパーブルームーン」に合わせて発売、新たな熱狂を呼び起こす
 BY TIM BARBER
 研究チームは、これらの文化的な変化が、男性に対してより競争の激しい環境をつくり出した可能性があるという。つまり、この新しい社会では、一部の男性が他の男性よりも著しく大きな富を手にした可能性が高いというのだ。また、車輪や馬、ラクダによってもたらされた移動手段の向上も、男性主導による他共同体の征服などにつながり、特定の地域における男性間の生殖競争を激化させたかもしれないと考えられている。
 関連記事: 人類はなぜ文化的に進化したのか。カギは「男性ホルモンの低下」にあり:研究結果
 PHOTOGRAPHS BY WIKIMEDIA COMMONS
 TEXT BY CATHLEEN O'GRADY
 TRANSLATION BY HIROKI SAKAMOTO, HIROKO GOHARA/GALILEO
   ・   ・   ・